新型コロナワクチンはどのくらい安全? 免疫学者が注視する“3つの副反応”の可能性
今の段階ではリスクを判定できない
宮坂氏が懸念するのは、臨床試験での数の少なさだ。 「ADEは、03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)のワクチン開発中にも観察されており、SARSウイルスと近縁である新型コロナのワクチンでも、起きる可能性は否定できません。ただファイザーの試験でさえ、接種後に感染した人はたった8人。この数少ない段階では、ADEがどれくらいの頻度で起きるのか、リスクを判定できない。販売後のデータをチェックしていくしかないのです」 ファイザーが日本人を対象に行った試験の規模は160人、武田薬品工業がモデルナのワクチンで行うのも200人規模。政府はこれをもって「条件付早期承認制度」の適用を念頭に置いている、と宮坂氏は見る。 「海外の人を対象にした臨床試験で有効性と安全性が確認されたから日本人も同じかといえば、イエスともノーとも言えません。過去には海外での好成績を理由に国内での第3相試験を省略して抗リウマチ薬を承認した結果、25人が間質性肺炎で亡くなったという痛い目に遭った経験もある」 欧米での接種が進む中、宮坂氏がいう「販売後のデータ」の蓄積も進む。海外での実績を注意深く観察していく必要がある。 ◆ ◆ ◆ 宮坂氏へのインタビューの全容は「文藝春秋」2月号および「 文藝春秋digital 」に掲載している。
広野 真嗣/文藝春秋 2021年2月号