新型コロナワクチンはどのくらい安全? 免疫学者が注視する“3つの副反応”の可能性
「第2に、2週間から4週間経過後に出てくるのが脳炎や神経麻痺といった症状。麻疹のワクチンでは100万回に10回程度、脳症が起きることがあります。一方、自然感染でも発症例があり、その頻度はワクチンの10倍。このため、ワクチンを打った方がリスクを下げられるのです」 宮坂氏によれば、インフルエンザワクチンに関しても100万回に0.15回と非常にまれながら、脳炎を発症することがある。 「以上のような事例を俯瞰して見ると、ワクチン接種によって重篤な副反応が出るリスクは、100万回に1回から10回の間です。ワクチンによる副反応のリスクはゼロにはなりませんが、車の死亡事故よりはずっと小さく、飛行機の事故と同じかちょっと小さいぐらいの水準ということになります」(宮坂氏)
「接種すると症状が悪化する」可能性も
そのような副反応の頻度を調べるのが、臨床試験だ。ファイザーが海外で行った新型コロナのワクチンの第3相の臨床試験では、2度目の接種後の4週間の観察期間を通じて、深刻な神経症状はなかったと発表された。ただ宮坂教授は、「これで副反応がないと結論づけられるかといえば、別問題です」と注意を促す。 「第3の副反応である『抗体依存性感染増強(ADE)』という現象は、接種した人が後にウイルスに感染した際、むしろ症状の悪化を促進してしまうという副反応です」(宮坂教授) どういうことか。 「通常、免疫ができるのは、体の中にウイルスを殺したり、不活化したりする『中和抗体(善玉抗体)』ができるから。ただ、感染やワクチンによって発現する抗体の中には、エイズの抗体のように、感染後に体内で増えてもウイルスに対する働きを持たない『役なし抗体』や、感染性を強めてしまう『悪玉抗体』ができてしまうことがある」(同前) この悪玉抗体が、ADEの原因となる。典型例はネココロナウイルスだった。かつて飼い主の求めに応じるかたちでワクチンが開発されたが、接種したネコには予防効果が見られない上に、ウイルスが感染した際には、かえって症状が重くなった。病原体を呑み込んで分解する体内の食細胞がウイルスに感染し、その状態で全身に広がっていた。細胞間の情報をやりとりするシグナルの一つである炎症性サイトカインが大量に放出されており、これが炎症を悪化させる原因の一つになっていたのだ。