飲酒・喫煙「18歳」引き下げ 根強い反対論の背景とは?
立法趣旨が「公職選挙法」などと違う
片山弁護士は、そもそも立法の趣旨が公職選挙法や民法の成人年齢とは違うとも指摘します。 「法律の立法趣旨からも賛成できません。未成年者喫煙禁止法や未成年者飲酒禁止法の第1条は、『満20年に至らざる者は…』と規定されており、『“成年”に至らざるもの』としていません。選挙権や成年の年齢引き下げと、飲酒喫煙の年齢を引き下げる話はその立法趣旨が異なるので一緒に検討すべきものではないのです。『早いうちから政治に関心を持つ』という趣旨での引き下げはわかるが、『若者の健康を守る』という趣旨からすると、こちらはスライドする必要はなく、むしろ引き上げたっていいとも思います」
海外では解禁年齢「引き上げ」の動きも
最近では米国医学研究所(IOM)が、アメリカでのたばこを購入できる年齢を、18歳以上から21歳以上に引き上げることを支持する報告書をまとめました。その理由は早死にや低体重の赤ちゃんを減らし、15~17歳で喫煙を開始する少年少女を減らすことです。報告書では、最低年齢を21歳に引き上げれば、早産児が約28万6000人、低出生体重児が43万8000人減少すると見込まれています。公衆衛生局の2013年統計で、喫煙者の約3分の2は18歳になる前から喫煙し、10代だとニコチン依存症になりやすいというデータもあります。 このように科学的に喫煙の健康被害が立証され始め、ニューヨーク市やコロンビア市(ミズーリ州)などの都市では、最近最低年齢が21歳に引き上げられました。来年1月からはハワイ州でも喫煙の年齢が21歳以上に引き上げられる予定で、解禁年齢の引き上げの機運が高まっています。 飲酒に関しても、世界保健機関(WHO)が若者の飲酒問題の対策として飲酒禁止年齢の引き上げの提言をしているほか、厚労省も国民の健康づくりを推し進める「健康日本21」の施策の中で未成年者飲酒をゼロにすることが目標とする動きがあるのです。 解禁年齢の設定は、施行当時の時代背景などの影響を受けています。片山弁護士は「事実、今規定されている法律がすべて正しいわけではありません」と指摘し、現在の世界各国の基準に合わせるべきではないとしています。飲酒喫煙に関する世界の潮流の変化や健康被害に関するデータも揃ってきましたので、解禁年齢の引き下げは慎重に進める必要があるでしょう。 (ライター・重野真)