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世界GP王者・原田哲也のバイクトーク Vol.40「あのクラッシュは、コースレイアウトにこそ問題があった」

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WEBヤングマシン

ロッシとビニャーレスの回避は奇跡としか言いようがない

1993年、デビューイヤーにいきなり世界GP250チャンピオンを獲得した原田哲也さん。虎視眈々とチャンスを狙い、ここぞという時に勝負を仕掛ける鋭い走りから「クールデビル」と呼ばれ、たびたび上位争いを繰り広げた。’02年に現役を引退し、今はツーリングやオフロードラン、ホビーレースなど幅広くバイクを楽しんでいる。そんな原田さんのWEBヤングマシン連載は、バイクやレースに関するあれこれを大いに語るWEBコラム。第40回は、様々な意見が出たザルコとモルビデリのクラッシュなどについて。 【写真】ヤマハ公式 ペトロナスヤマハSRTレプリカのYZF-R1が登場! TEXT:Go TAKAHASHI

レッドブルリンクで行われた2連戦は、どちらも波乱の展開

MotoGP第5戦オーストリアGP、そして第6戦スティリアGPは、2週続けて同じオーストリア・レッドブルリンクで行われました。どちらも波乱含みのレースでしたね。第5戦の恐ろしいクラッシュは、コースレイアウトの問題が大きく影響したように思えました。僕もA1リンクと呼ばれていた’96年と’97年にここでのレースを経験していますが、「怖いコースだな」という印象を持っていました。特に強烈な印象を残したのは、’02年F1での佐藤琢磨くんが3コーナーで巻き込まれた大クラッシュ。最悪の事態も覚悟する恐ろしい事故でしたが、今回のMotoGPも同じ状況で、本当に肝を冷やしました。

話はちょっと逸れますが、琢磨くんと言えば世界3大レースのひとつ、インディ500で2勝目を挙げましたね! 本当におめでとうございます。彼は以前僕と同じモナコに住んでいたので交流があるんです。インディ500で2度の優勝は本当にスゴイ! 前回優勝した時は、しばらくの間かなり忙しかったらしく、忘れた頃にLINEが返ってきましたからね(笑)。今回もうれしい忙しさに追われていることでしょう。4輪SRS(鈴鹿サーキットレーシングスクール)の校長を務めている琢磨くん、生徒たちにとっても最高な刺激となりました。 と、偉業をお祝いできるのも、琢磨くんが奇跡的に無事だったからこそ。MotoGP第5戦でヨハン・ザルコとフランコ・モルビデリが2コーナーでクラッシュし、コントロールを失ったマシンが3コーナーを走行中のマーベリック・ビニャーレスとバレンティーノ・ロッシに直撃しそうになりましたが、ギリギリ当たらずに無事だったのも、奇跡としか言いようがありません。ビニャーレス、ロッシともに素晴らしい反射神経で回避行動を取っていましたが、ぶつからなかったのは運でしょう。そういう強運の持ち主だけがMotoGPまで上がってくるのは確かですが……。 ザルコとモルビデリの接触は、ゆるく左に曲がる高速の2コーナーで発生しました。モルビデリをパスして前に出たザルコに、モルビデリが追突した形のクラッシュです。この接触についてはいろいろな意見が交わされ、実際にザルコには次戦でのピットスタートペナルティが課せられましたが、僕の考えとしてはどちらが悪いというものではなかったと思います。 2コーナーのRは映像ではゆるく見えるので、「ザルコがパスしたモルビデリに配慮してラインを変えればよかった」という意見が見られましたが、実際に走ってみるとちょっとでもラインを外すとリカバリーが難しいポイントです。高速なうえに曲がりながらのブレーキングになるので、僕が現役時代に走らせていた軽量な2スト250ccマシンでも自由なライン取りはほとんど不可能でした。それよりももっと速く、もっと重く、さらに空力パーツでダウンフォースまで効いている今のMotoGPマシンなら、「ちょっとラインを変える」なんてできないでしょう。 「後ろに配慮を」という意見はもっともです。僕も常に「ライバルたちへのリスペクトが欠かせない」と言っています。でも、今回のザルコの抜き方に問題があったとは思いませんし、完全にモルビデリを交わして前に出切ってからのクラッシュです。危険が伴うモータースポーツですので、他車を抜く際に必要以上のリスクを冒さないことは大事ですが、抜いた後に関してはやりようがないというのが実際のところではないでしょうか。また、「追突した」という事実だけ捉えれば、モルビデリの操縦にも問題ありと見ることもできてしまいます。でも、スリップストリームが効くような高速コーナーでは、いつものようなブレーキングはできなかったでしょう。わずかなタイミングのずれが、クラッシュを招いたのだと思います。 いろいろな見方ができ、いろいろな意見が出るクラッシュでしたが、もっとも問題なのは、他車が走行中の3コーナーにクラッシュしたマシンが戻ってしまうようなコースレイアウトでしょう。レースをしている限り、アクシデントの発生は起こり得ます。ザルコとモルビデリのクラッシュも、誰かに悪意があって起きたことではなく、いわゆる「レーシングアクシデント」の部類です。それが発生した時に、トラブルが拡大しないよう最大限配慮することが、コースには求められると僕は思います。第6戦スティリアGPでは急きょ3コーナーにエアフェンスが設けられましたが、昔から2~3コーナーに限らず危険性が取り沙汰されているコース。もう少し進んだ問題解決を望みたいところです。

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