菅内閣、短命に終わるこれだけの理由 スーパー世襲政党のロジックと無責任政治体制
目下、東京地検特捜部の取り調べでけん制されている安倍にとって、菅は急場しのぎで留守を預からせただけで、使用人として見下しきっているのが実態だろう。事実、辞意表明直後に敵基地攻撃能力に関して談話を発表し、後任首相の手を縛ろうとした。 このことだけでも常軌を逸しているが、辞任からわずか2カ月後の11月に衆院解散・総選挙について「もし私が首相だったら非常に強い誘惑に駆られる」とわざわざ言って注目を浴びた。永田町の常識で言えば、菅をよほどばかにしていなければ到底できることではない。 最大派閥の清和会にいつでも復帰して会長に収まることができ、まさに「上皇」気取りなのであろう。本音では3度目の登板を諦めていないのかもしれない。 同じく元首相の孫で自身も元首相にて今や8年の長きにわたって副総理兼財務相として居座る安倍の盟友・麻生は、党内第2派閥を率いる。 配下として元総裁の子にして3世議員の河野太郎を菅の次の首相に押し込み、80歳でもなおキングメーカーとして影響を保持しようともくろんでいる。傲岸(ごうがん)不遜で知られる麻生が「たたき上げ」の菅を対等の人間として見ているとは到底考えられない。
麻生派と並ぶ派閥の領袖(りょうしゅう)は竹下亘、竹下登元首相の弟である。二階が第4派閥の長だからと言って、平時に三大派閥を意のままにできるわけがない。 こうしてみると、世襲でなく、派閥に属さない菅は、安倍が政権を再び放り投げるという特異な状況でなければ首相になれなかったはずである。 側近と言えば、河井克行や菅原一秀らしかいない惨状で、自前の官房長官さえ選べなかった。加藤勝信は官僚出身だが、安倍の父・晋太郎の側近中の側近だった加藤六月の娘婿で、安倍晋三からすれば次の首相候補とすることを念頭に官房長官に据えさせたと見るべきだ。 もう一人、安倍や清和会(そして経産省、財界)が目にかけているのが、経済再生担当・コロナ対策担当大臣の西村康稔である。 西村も加藤同様官僚出身で、その岳父が吹田愰という岸信介の地元山口における側近で、吹田は岸の政界引退に際して選挙区で後継指名を受け国政進出を果たしたほどである。つまりやはり姻戚・血縁を通じて安倍・岸家の人脈だ。岸家と言えば、安倍の弟・岸信夫もまた防衛相として入閣している。