コロナ禍で「子どもの虐待」は初の10万人超で最多、刑法犯は戦後最少
2020年に全国の警察が把握した刑法犯は61万4303件で19年から17.9%(13万4256件)減少し、戦後最少となったことが警察庁の犯罪情勢統計で判明した。路上強盗やひったくりなど夜間に多く発生する街頭犯罪が大幅に減っており、新型コロナウイルス感染拡大の影響による外出自粛が理由とみられる。一方、虐待の疑いがあるとして警察が児童相談所に通告した子ども(18歳未満)は10万6960人(前年比8.9%増)で、統計を取り始めた04年以降、初めて10万人を超えた。配偶者やパートナーからの暴力被害(DV)の相談や通報も過去最多の8万2641件(同0.5%増)となり、コロナ禍で在宅時間が増えたストレスなども背景にあるとみられる。(事件ジャーナリスト 戸田一法) ● 治安のバロメーターが減少傾向 警察庁によると、刑法犯が前年比17.9%減となったのは過去最大の減少率。ちなみに「刑法犯」とは刑法および、暴力行為処罰法などに抵触した犯罪を指す。中でも殺人、強盗、放火、強制性交、強制わいせつ、略取誘拐・人身売買の6つを重要犯罪としている。いずれも各都道府県の警察本部でいえば「捜査1課」が担当する凶悪犯罪だ。 そのうち街頭犯罪は路上強盗、ひったくり、自動車・オートバイ・自転車盗、車上・部品狙い、自動販売機狙いの盗犯、傷害、暴行、恐喝の粗暴犯、強制性交、強制わいせつの性犯罪のほか、略取誘拐・人身売買を含む街頭で発生した事件を指す。
20年は19万9282件(前年比27.0%減)と4分の1以上減少。特に自販機狙いは49.8%減、ひったくりは43.5%減といずれも半数近くになった。コロナ禍で全国に緊急事態宣言が発令された4月以降、著しく減少した。 これら刑法犯は「治安のバロメーター」と呼ばれ、02年の約285万件をピークに減少傾向にある。20年は特に夜間の外出や飲酒を含む外食をする人が減少したため、被害が減ったとみられる。 ● 3歳女児を1週間放置し餓死させる 児童相談所(児相)への通告は、子どもに暴言を吐いたり目の前で家族に暴力を振るったりする「心理的虐待」が7万8355人(73.3%)で最多。次いで直接の暴力などの「身体的虐待」が1万9452人(18.2%)、食事を与えないなど怠慢・拒否(ネグレクト)の「育児放棄」が8858人(8.3%)、「性的虐待」が295人(0.3%)だった。 実際に刑法犯として検挙した事件も、19年から159件増えて過去最高を更新し、2131件(前年比8.1%増)になった。 東京都大田区では昨年6月、自宅に3歳女児を1週間放置し死なせたとして、母親が逮捕される事件があった。 起訴状によると、梯(かけはし)沙希被告(25)=保護責任者遺棄と同致死の罪で起訴=は6月5日ごろ、長女の稀華(のあ)ちゃんを置き去りにして鹿児島県への旅行を計画し、自宅マンションの部屋のドアを閉めてソファで固定し外出。必要な飲食をさせず稀華ちゃんを放置し、12~13日に高度脱水症と飢餓で死亡させた。 5月8~11日に鹿児島に行った際も、同様に稀華ちゃんを置き去りにしたとされる。 全国紙社会部デスクによると、いずれも交際する男性に会いに行っていた。6月13日に帰京し、沙希被告が「娘が息をしていない」と119番通報して事件が発覚した。沙希被告は稀華ちゃんの父親と離婚し、2人暮らしだった。