モルドバから世界へ 日本未上陸の新進ブランド「OK KINO」の繊細なものづくりの背景を探る
「モルドバ共和国」と聞いて、何をイメージするだろうか? モルドバは東欧に位置し、ルーマニアとウクライナに隣接する旧ソビエト連邦を構成していた国家のひとつ。国土は九州よりやや小さく、ワイン程度しか特段の産業もないため、経済規模では“ヨーロッパ最貧国”として知られている。 ファッションの素晴らしい側面は、資源不足による制限が創造性を刺激する要素になり得ることで、拠点とする国の経済規模が必ずしもネガティブにならないことである。モルドバの首都キシナウ現地を訪れ、デビューから2シーズン目を迎えた「OK KINO(オーケーキノ)」に出合って、改めてそう感じられた。 共同創立者のダリア・ゴルノヴァ(Darya Golneva)とデニス・カウノフ(Denis Caunov)は共にモルドバ出身で、キシナウを拠点に主にモルドバ生産のウィメンズウエアを展開する。 その魅力は、自然素材を使った多彩な質感の生地に、丁寧に仕立てられたテーラリング、体のラインを美しく見せるカットとシルエット。洗練された都会的なデイリーウエアに、モルドバの伝統的な手法で編まれたクロシェを装飾として施したり、祖父母が着用していた古い洋服から踏襲したディテールのデザインを織り交ぜたりと、独自性を探究している。 注目すべき有望株である「OK KINO」。クリエイティブのプロセスやモルドバのファッション事情など、ダリアにブランドの背景を聞いた。
もっとも創造的な表現の手段
ーまずは、2人の出会いから教えてもらえますか? 私たちの出会いは大学です。デニスは建築を、私はファッションデザインを専攻していました。異なる分野とはいえ、共にファッションを含むデザインに対する共通の情熱を持っていたため、常にアイディアを交換することができました。 大学卒業後、デニスは建築事務所で働き、私はテキスタイルデザインの経験を積むためにイタリアへ行きました。それでも、私たちのファッションへの情熱が冷めることはなく、しばらくしてから一緒に洋服を作るために協力することを決めました。 シェイプやテクスチャーに無限の可能性のある洋服づくりは、私たちにとってもっとも創造的な表現の手段だと感じたからです。