やってみようという強い意志を持つ・心の駆け込み寺
大切なのは「やってみよう」と素直に思うこと
何かを始めたい、と思ったときにも「どうせうまくいかない」とためらう気持ちがあると、同じように、うまくいかない、という結果を引き寄せてしまいがちです。このような人の心の法則があるからでしょうか、仏教の教えの中には「初発心時便成正覚(しょほっしんじべんじょうしょうがく」という言葉があります。 これは、「心がこれをやってみよう、と思ったときに、それはすでに成されている」という仏教に伝わる言葉です。 考えすぎる人の大半は、深く熟考しているのではなく、迷っているだけ、ということが往々にしてあります。人間の悩みの多くは「迷い」から生じるもの。迷っているばかりでは前に進めない、それよりもまずやってみようと思うことが大切、そう強く思うことができたら、もうその願いはかなったも同然なのですよ、と教えてくれています。 米国の心理学者で哲学者でもあるウィリアム・ジェームズも「心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる」という言葉を残しています。この言葉はヒンズー教の経典に由来しているという説もあるようですが、仏様から哲学者まで、長い時間を経て語り継がれているということは、私たちが学ぶべき真理を言い表している言葉なのかもしれないな、と考えさせられます。 【ミニ知識】人の悩みに関わる仏教用語の深い意味 初発心時便成正覚(しょほっしんじべんじょうしょうがく) 「心がこれをやってみよう、と思ったときに、それはすでに成されている」という仏教の言葉。人はつい自分を危険や不安から守るために考え、迷いすぎる傾向がありますが、そのような迷いが行動を邪魔することも往々にしてあります。まず、「やってみよう」と強い意志を持つことが大切なのです。
180度違うことをしてみよう
これから何かを始めたいと思うときには「今までのやり方を変えていこう」という強い意志を持つようにしてみましょう。 そのときに一つの目安にしたいのが「これまでとは180度違うことをしてみる」ということ。仏教では、原因があって結果がある、という「因果(いんが)」という考え方があります。つまり、単純に言えば、今幸せならばこれまでと同じやり方をすれば幸せでいられる可能性が高く、逆に、何かを変えたいならこれまでと180度違うやり方をすれば、結果も180度変わるのです。「どうせダメだ」が口癖だったのなら「きっとうまくいく」という口癖に変えたり、「誰かが挨拶してくれるのを待つ」だけだった人は「自分から挨拶する」に変えてみる、そんなことから始めましょう。まず、180度変えてみること。とりあえず両極端なことをやってみると、そこで得た感触から、自分にとって最も程よいやり方が見えてくるものです。 また、密教では「事相(じそう)と教相(きょうそう)」というものを大切にしています。事相とは、実践。教相とは、理論。理論だけでは不十分で、学ぶことと行動することが両輪となり回ることが物事の達成には不可欠という考えです。何かを始めるときは、ある程度考えることも大切。でも、それだけでなく、行動に移してみましょう。考えながら動く、壁にぶつかったらそこでまた考える。そうやって繰り返しているうちに、あなたの「こうなりたい」というイメージは実現していきます。 趣味、資格取得、海外留学、婚活など、興味は多少あったけど今まで積極的にチャレンジしなかったことを始めてみる。そんな明確な意志を持ったときから、あなたの人生の可能性は無限に膨らんでいくのです。 今回のアドバイス 何かを始めるときは、「実践」と「理論」のバランスを大切に行動しよう 密教では「事相【実践】」と「教相(理論)」のバランスが大切だという教えがあります。例えばテニスの場合、教科書を見るだけでは打てないし、最初からただラケットを振るだけでは、正しいフォームは学びにくいもの。どんなことであっても、学び、実践してみて、壁にぶつかったら修正するべきことを学ぶ、という繰り返しによって、その人の才能を磨いていけます。 取材・文/柳本 操 写真/PIXTA 日経ヘルス2016年9月号掲載記事を再構成 この記事は雑誌記事掲載時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります