プリウスに嫉妬した男 「ボブ・ルッツ」が携わった名車・迷車 25選 BMW、GMで活躍
ジープ・グランドチェロキー(1993年)
ルッツ氏は、国際モーターショーにおける派手な登場シーンでも知られている。新型グランドチェロキーのハンドルを握り、デトロイトのコールマン・ヤング(1918-1997)市長を助手席に乗せ、ショー会場の階段を上りガラス窓を突き破って登場したのだ。 もちろん、一連の演出は綿密に計画されたものだ。ガラス窓もオリジナルのものではなく、破片が細かく砕けるように設計されていた。どんなスタントよりも効果的に、しかも安く、グランドチェロキーへの注目を集めた。その時の映像は今も動画配信サイトなどで見ることができる。
ダッジ・ラム(1994年)
第2世代のラムは、先代とはまったく異なるアグレッシブな外観を持つ。ルッツ氏によれば、当時のクライスラーはフォードやGMとの激しい競争に直面し、フルサイズ・ピックアップトラックから撤退するよう助言を受けていたという。 しかし、ラムは「大胆で、異彩を放ち、賛否両論を巻き起こすデザイン」と、強力なエンジン出力、トルク、最大積載量で印象を強め、大ヒットを飛ばした。以降、同じ方式が30年間使われてきた。今日のラム・トラック(2010年にラムが別部門となったため、ダッジの名は外れた)には、ルッツ氏が深く関わっていた頃と同じ理念が目に見える形で受け継がれている。
クライスラーPTクルーザー(2001年)
PTクルーザーが発表されたとき、レトロデザインの流行はすでに始まっていた(フォルクスワーゲンの「ニュー」ビートルも1997年後半に発表されていた)が、ルッツ氏はクライスラー社内で大きな反発を受けたという。 ルッツ氏はクライスラーの重役という立場から、同社の行動にある程度影響を与えることができたが、「社内で徹底的に嫌われていた」というレトロデザインを押し通すためには「わたしのできる力をすべて」注がなければなからなかったようだ。
シボレーSSR(2003年)
ルッツ氏は30年以上他社に勤めた後、GRに戻ってからもレトロデザインを推し続けた。シボレーSSRは、分類するならばリトラクタブル・ハードトップ・コンバーチブル・ピックアップトラックで(誰が欲しがるのか?)、GMのSUVに使われるプラットフォームをベースに、1940年代後半から1950年代半ばまで販売されていたシボレー・アドバンス・デザインに似せて作られた。 「もちろん、きちんとしたものでなければならない」とルッツ氏は開発段階で語っている。どうやら、SSRはそうではなかったようだ。SSRの売れ行きは芳しくなく、2006年モデルを最後に廃止された。だが、それでもルッツは再挑戦を止めなかった。