世界フィギュアSP5位発進の宇野は逆転可能か?出場枠3は死守できるのか
元全日本2位で現在福岡で後進を指導している中庭健介氏は、「右足のスピン、ステップシークエンスでの踏み込みの強さ、ジャンプのランディング、スケーティングの滑りなどを見る限り、そこまで重症ではなかったんだ、と安心はしました」という。 故障の影響を感じさせずに、4回転トゥループのGOE(出来栄え点)は2.29、最後のトリプルアクセルのGOEも2.43と高く評価された。 ただプログラム変更の背景には、まだ不安も残る。 「右足の甲を痛めると、やはり4回転フリップや4回転ループなどの踏み切る際に強く右足の特につま先部分(トゥ)を使うジャンプでは痛みが出ます。今回、4回転フリップを外したのは、そういう理由なのでしょう。また、連続ジャンプでは最初の3回転サルコウが明らかに回りすぎました。4回転ジャンプからの連続ジャンプが身についてしまっているための弊害ですね。それでも後ろに2回転トゥループをつけたり、4回転トゥループやトリプルアクセルの見事な成功など、さすがです」と中庭氏。 宇野は、中1日空けて24日に行われるフリーでは「攻める」と宣言した。おそらく4回転フリップ、4回転ループを解禁するつもりなのだろう。 そのプログラムは可能なのか、そして逆転優勝の可能性はあるのか。 「宇野選手はフリーでは来年の世界選手権の枠取りのために攻めるプログラムで臨むことを宣言していますが、心配はあります。前半に使う4回転フリップの踏み切りで痛みが再発してしまうと、最悪、後半の演技を続けることができなくなる危険性もあります。練習日に、色々と模索すると思いますが、右足への負担が少ない4回転サルコウを含んだ構成などもあるかと思います。トップのネイサン・チェンは4回転を5本跳ぶ予定ですので、ノーミスですべてを成功されると、現在の7.68点差はハンデとなりますが、ミスが生まれると逆転優勝も可能でしょう。また3位のヴィンセント・ジョウ(アメリカ)も高い技術基礎点を持っている選手ですが、2.52点差なら十分に圏内です」 1位のチェンとは7.68点差、2位のミハイル・コリヤダ(ロシア)とは5.82点差があるが、3位のジョウとは2.52点差、4位の金博洋(中国)とは1.59点差しかなく、逆転は十分に可能だという。 そして宇野が表彰台を確保した場合に焦点となるのが、来年の出場枠「3」を死守できるか、どうかという問題だ。仮に宇野が3位となった場合、友野、田中が10位以内に入ってこなければ、「計13位以内」の条件をクリアできない。また宇野が逆転優勝した場合は「12位以内」でOKということになるが、いずれにしろSPで11位の友野、14位の田中は、フリーでは完璧な演技を要求される。 中庭氏は、「まだ友野選手の下にドミトリー・アリエフ(ロシア)やマックス・アーロン(アメリカ)がいます。状況としては、3枠を確保するには厳しい状況に置かれていますが、友野選手は初出場の勢いと元気強さ、田中選手はオリンピックで学んだ経験で、2人共にベストな演技でフリーを滑りきれば十分に可能性はあります。また2人の演技が宇野選手へのエネルギーに必ずなります。男子3人のある種のチームワークが3枠確保への大切なポイントになるでしょう」という見方をしている。 宇野は、最終的にどんなプログラム構成を決断するのか。そして友野の勢いはフリーでも続き、田中はSP失敗の雪辱を果たすことができるのだろうか。 運命のフリーは24日に行われる。