バイデン新政権~「多様性の反映」と「プロの実務者の配置」のバランスをどう取るか
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月4日放送)に内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦が出演。政権移行プロセスが進むアメリカの次期政権について解説した。
バイデン政権~順当な人選のオーソドックスな内閣に
国内外の安全保障情勢に関する機密情報をまとめた「大統領日報」も提供され、民主党のバイデン前副大統領への政権移行に向けた引き継ぎが進んでいる。バイデン氏はイベントで「アメリカは戻って来た」と述べ、「アメリカファースト」からの転換を訴えている。 飯田)バイデンさんへの権力の移譲については、粛々とやっているという感じなのですか? 宮家)ようやく政権移行プロセスが始まりましたね。トランプさんも流石に諦めたのでしょう。そして、相当な数の閣僚の名前が発表されています。バイデンさんは“America is back”などと言っていましたが、私からすると、アメリカがバックではなくてワシントンがバックしたということです。トランプさんの時代に、「影の政府の連中」だと批判されて来たような、ワシントンに長く住んでいる議員や高級官僚、それからいわゆる政治任用者、専門家、彼らが帰って来たのです。民主党で4年間我慢して来た人たちが、オバマ政権の時代には副長官や副補佐官だった人たちが、順当に上がって来ています。あまりにも順当というか、みんな知った友達ですから、同盟国や友好国もやりやすいと思います。不確実性が低くて、予測可能性が高い、オーソドックスな内閣になると思います。
多様性をどう反映するかということと、プロの実務者をどう使うか
宮家)ただもう1つのポイントは、やはり民主党ですから、アメリカの多様性というものを代表しなくてはいけない部分があります。今回いちばん目立つのは女性の多さですよね。広報チームなどは7人全員女性です。国連大使もそうです。アフリカ系の登用はいいけれど、もっと主要閣僚を出して欲しい、という声もあるでしょう。また、リベラルの人々は「あいつはダメだ、こいつはダメだ」と言うわけです。ですから、「多様性をどうやって反映させるか」ということと、「プロの実務者をどうやってうまく使うか」、このバランスで苦労していて、それがうまく行っていないところは、まだ名前が発表されていない。人が決まっていないということだと思います。 飯田)そこで焦点となるのが国防長官ということですか? 宮家)そうです。ミシェル・フロノイさんという非常に優秀な女性がいます。左派の人たちの中には、「フロノイさんは軍事産業からお金をもらっているのではないか」と、「タカ派ではないか」と言う人もいます。文句を言う人がワシントンにはたくさんいますから、それでまだ決まらないという説もあります。彼女は優秀なので、下馬評では本命だったのですが、必ずしもそうではなさそうですね。 飯田)このところ退役陸軍大将の黒人の方というのが浮上して来ました。 宮家)これが先ほど申し上げた多様性の反映ということで、アフリカ系はいちばん手っ取り早いのですが、これもどうですかね。もちろんそれがダメだと言うつもりではないのですけれども。ただ、最初に決まったのが国務省、国家安全保障担当補佐官ですね。それから、イエレンさんという財務長官も、元FRB議長でしょう。経験者ばかりです。よく考えられているというか、順当すぎて面白くも何ともないという意味で、素晴らしいと思います。 飯田)日本にとっても見逃せませんね。 宮家)毎朝の大統領のツイッターで驚くことがなくなったですね。 飯田)トランプさんのツイートを見て。 宮家)きちんとした人たちと意見交換をして、結論が徐々に上に上がって行くという、ごく普通の政策決定プロセスが戻って来るのでしょう。だから「ワシントンが戻って来た」と言っているのです。