救世主は衝撃弾の27歳日本人 史上最悪→奇跡への光明…名前を「世界に広められる」【現地発コラム】
三好が目指すさらなる高み「自分のキャリアの中でも最高峰のレベル」
三好のゴールで昨季優勝チームから勝ち点1をもぎ取った効果は計り知れないほど大きいだろう。同僚のGKパトリック・ドレヴェスはまくし立てた。 「スタジアムの外にいる人がこの盛り上がりを聞いたら、ボーフムが勝ったのかと思うだろう。気持ちの面では勝利を手にした気分だ。安堵ははかり知れないものがある。今季ここまで多くの失点に悩まされていることから考えても、今日のチームのパフォーマンスは最大級の賛辞に値する。誰もが仲間のためにファイトして、ボールに飛びついていった。レバークーゼンのオフェンシブの強さは誰もが知っていること。前線の選手もよくやった。これほどまでの気持ちのこもったプレーを見せて、結果を手にすることができたのだ。新監督としていいスタートを切れた瞬間だ」 一時期、キャプテンのMFアントニー・ルシアが「まだチームとしての姿を僕らは見つけていないし、一丸になっているとは言えない状態」と漏らしていたことがある。そんなボーフムが1つのチームとなるきっかけを見つけ出した。三好もレバークーゼン戦後に次のようなコメントを残している。 「このゴールはファンの、チームの、そしてゴールのために決めたものです。チームとして一丸となって同じ方向へと進んだと感じています。これは新監督の手腕によるものでもあります。チーム一丸となることを誓い合って試合に臨みました。もっとみんなで改善しなきゃいけないことはあるけど、でも僕らがチームとして支え合って戦えることを今日示せたと思います」 勝ち点1は2となったが残留に向けての道のりはまだまだ遠く、険しい。だがドイツメディアに「これまでさまざまな奇跡の残留を果たしたボーフムだが、今季の挑戦はそのどれよりも難しい」と書かれた最悪の状況は脱しつつある。 殊勲の三好には今後さらなる活躍が求められるし、27歳の日本人レフティーはレギュラーポジションを確保して中心選手としてチームを支えてくれるはずだ。フライブルク戦後に今季の目標についてこう語っていた。 「まずはこのチームで目標とする部分、それは残留になりますけど、そこはしっかり達成したいです。そして三好康児という選手をすごく世界に広められる舞台だと思っています。今まで自分のキャリアの中でも、ここは最高峰のレベルだと思っていますし、そういったところで自分に何ができるかというのをしっかり証明したいです」 リーグはまだ序盤だ。ここからのボーフムと三好の巻き返しに大きな期待が寄せられる。 [著者プロフィール] 中野吉之伴(なかの・きちのすけ)/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。
中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano