東京五輪開催に再び暗雲、医療専門家の意見分かれるーコロナ拡大で
(ブルームバーグ): 東京五輪の開幕を半年後に控え、開催を危ぶむ声が再び高まっている。世界各国で新型コロナウイルス感染が拡大しているためだ。
「感染を抑え込むには2カ月半はかかる」。昭和大学医学部の二木芳人客員教授は12日、ブルームバーグの取材に対して、新型コロナ感染拡大に伴い東京五輪の中止論が浮上する可能性を指摘した。変異種の報告例もあることから、たとえ開催できても海外からの観客は原則受け入れるべきでないという。
東京都の新型コロナ新規感染者数は7日に過去最多の2447人を記録。菅義偉首相は同日、東京など1都3県に緊急事態宣言を発出した。きょうにも大阪など7府県を追加する。米ジョンズ・ホプキンス大学によると、世界の累計感染者数は10日、9000万人を突破。英国や南アフリカ共和国では感染力の強い変異種も確認されている。
昨年3月に大会延期を決定して以来、東京五輪・パラリンピック組織委員会は今年7月の開催に向け準備を進めてきた。新たな日程を調整し、会場を確保、簡素化による費用削減やスポンサーとの交渉を重ねた。今回の緊急事態宣言は、昨年12月にアスリートや会場の感染症対策の中間整理をまとめた後のタイミングだった。
今月9日から3日間行われたNHKの世論調査によると、東京五輪・パラリンピックについて「中止すべき」「さらに延期すべき」と答えた人は合わせて77%に上った。
組織委の森喜朗会長は12日、職員に向けた新年のあいさつで「中止や延期はあり得ない」と断言。同席した武藤敏郎事務総長も、国内でのワクチン接種開始で感染状況が落ち着く可能性を指摘し、「万端の準備を進めるのがわれわれの使命だ」と語った。
組織委は、今春をめどに観客の上限数や海外からの入国制限のあり方を決め、その後は状況を見ながら感染症対策などの対応を調整していく方針。延期による費用を加えた大会経費は1兆6440億円となった。
国民守ることが優先されるべきだ