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人類が自滅する可能性を拡大する脅威 ブリクス元IAEA事務局長に聞く NPT発効50年

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 世界の核秩序の礎を担ってきた核拡散防止条約(NPT)の発効から50年。「核の番人」と呼ばれる国際原子力機関(IAEA)のトップとして核を巡る国際政治の現実を見つめてきたハンス・ブリクスIAEA元事務局長(91)は共同通信のインタビューで、核保有五大国による軍縮停滞を批判、国際情勢の緊張緩和と核問題解決に向けた外交への尽力を求めた。(共同通信=土屋豪志)  ▽動かぬ核保有国  世界は二つのことに同時に脅かされている。深刻化が続く核兵器の脅威は、私たち全員に急速な自滅を突きつけている。人類と文明の自滅だ。そして気候変動が、緩慢な自滅を突きつけている。私は長く軍縮と核に携わってきたが、(世界の環境保全の礎と言われる)国連の人間環境宣言(1972年採択)の起草にも関わった。巨大な国際世論を覚醒させるのは簡単ではないが、核と気候変動、どちらも目を離してはいけない。  核拡散防止条約(NPT)で一貫して問題なのは、非核兵器保有国が核兵器から距離を取り、IAEAの査察体制を固守してきたのに対し、米国、ロシア、英国、フランス、中国の核保有五大国は(NPT発効から)50年間、有意義な核軍縮交渉に向けて動かなかったことだ。それどころか、核兵器の近代化や再軍備が行われている。NPTで想定されているのとは逆の方向に進んでいる。

 さらには、成立していた合意の破棄という後退も起きている。ブッシュ米政権(2001~09年)は米ロの弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約から撤退、トランプ米政権は新戦略兵器削減条約(新START)の延長に後ろ向きに見える。偵察を認め合い透明性を高めていた多国間のオープンスカイ(領空開放)条約の維持も危ういと指摘され、米国では包括的核実験禁止条約(CTBT)の署名撤回も議論されている。もし核実験が再開されれば世界中に広がるだろう。  トランプ米政権は軍拡を抑制する多国間、2国間の合意を排除しようとしている。規範に基づく国際システムの構築に米国が果たしてきた極めて建設的な役割を考えると、その破壊者のようになっていることを残念に思う。われわれは核保有五大国が、軍縮に着手しないことを批判し続けるべきだ。  ▽交流と緊張緩和  核軍縮交渉を真に促進するのはデタント(緊張緩和)だ。ウクライナ、中東、極東情勢を見ても、デタントに向けた努力はこれといったものがない。ただ、西側とロシアの行き過ぎた冷え込みに米政権などの一部は気付いている。かつて活発だった米ロの科学者や軍などの交流は非常に落ち込んだ。デタントは交流を増やすことから始めるべきで、その声はワシントンにもある。

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