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なぜキヤノンとニコン、新フルサイズミラーレス相次いで投入?

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BCN

 フルサイズミラーレス一眼市場が、またにぎやかになってきた。7月9日にキヤノンが新製品「EOS R5」「EOS R6」の2機種を発表、7月21日にニコンが「Z5」を発表した。受けて立つのは、6割のシェアでトップを走るソニー。7月29日に新製品「α7sIII」の発表を控えている。レンズ交換型カメラの中で、ミラーレス一眼の比率が7割に迫り、高価格帯のフルサイズモデルも主戦場がミラーレス一眼市場にシフト。いよいよ本格的なシェア争いがスタートする。一体、ソニーの牙城を崩すことができるのか。  ソニーの強さの根源は、ラインアップの厚さにある。6月に販売された同社のフルサイズミラーレス一眼は、全部で11モデル。キヤノンの3モデル、ニコンの2モデルに比べれば、圧倒的な多さだ。2013年11月、先陣を切ってフルサイズミラーレス一眼を発売して以来、ソニーは機能と価格のバリエーションを拡大。旧モデルも併売することで、幅広いニーズに応える体制を整えた。製品力はもちろん、こうした「面戦略」も現在の高いシェアにつながっている。  レンズのバリエーションにも一日の長がある。一眼レフの2強がレンズマウントを使ってユーザーを囲い込み、フィルム時代から展開してきた戦略を、ミラーレス化というパラダイムシフトを利用して、ソニーがなぞっているかのようだ。  攻守交替、チャレンジャーの側に回ったキヤノンとニコン。両社がソニーに挑む戦略は真逆だった。キヤノンが低価格モデルから攻め上がり、ニコンが高級モデルから攻め下る戦略だ。  この6月の集計で、キヤノンは販売台数の90.7%が20万円未満で、20万円以上の高機能・高価格帯に大きな穴が開いている。ニコンは、逆に20万円未満の低価格モデルがなく、がら空きの状況。ソニーは、20万円から25万円未満が69.7%と大部分を占めつつ、その上下にもバランスのいい製品を配置、フルラインで市場を席巻してきた。    そこで、キヤノンは高機能・高価格帯の穴をふさぐ戦略に出た。R5、R6の投入だ。R5は、有効4500万画素の高解像度モデルでボディ価格が46万円。同社初のボディ内手振れ補正機能を備え、手振れ補正付きレンズと組み合わせて最大8段分の補正を可能にした。レンズ交換型カメラで初の8K動画機能も搭載。画面の縦横ほぼ100%でピント合わせが可能だ。  R6は、高感度モデル。価格は30万5000円。画素数は2010万画素だが、その分暗所撮影に強く、常用ISO感度は100~102400とR5をしのぐ。8K撮影機能こそないが、そのほかはR5と互角のスペックだ。これらハイスペック2モデルでシェア拡大を狙う。    一方、ニコンはこれまで、4575万画素で32万2500円のZ7、2450万画素で25万2500円のZ6と、高価格帯2モデル展開してきた。キヤノンとは逆に、20万未満が真空地帯だ。先行2モデルは高価だった分、販売台数が伸び悩み、この5月と6月でシグマに抜かれ、4位に甘んじるありさま。低価格帯モデルのテコ入れが急務だった。  そこで、Z5だ。想定ボディ価格が16万6000円、新開発のレンズを同梱して20万2000円と、レンズキットでも実売で20万を切る価格を目指す値付け。上位モデルで不評だったXQDメモリカードシングルスロットを改め、SD系カードのダブルスロットへの変更も行った。  裏面照射ではないものの、有効2432万画素の撮像素子を搭載し一定の解像度を確保。ボディ重量は上位モデルと同じ675gだが、新開発のキットレンズにプラスチックマウントを採用したことで、大幅に軽量化。レンズ付きで870gの軽さを実現した。コスパの良さとフットワークの軽さでシェア奪還を狙う。    キヤノンとニコンが合わせて3機種を新たに市場投入することで、ソニーのシェアは多少奪えるもしれない。しかし、状況を激変させるまでのインパクトには欠ける。ソニーと互角に戦うためには、ラインアップを充実させる「時間」が必要だ。あと数年はかかるだろう。  もっと根本的問題もある。フルサイズミラーレス一眼のポジションだ。レンズ交換型デジカメの中で、フルサイズミラーレスの販売台数は、過去一度も9%を超えたことがない。ピークでも8.6%、販売金額でもピークは20.1%にとどまった。いずれも18年12月、キヤノンとニコンが参入し盛り上がったときだ。  以後、パッとしない動きが続き、この6月は台数で6.6%、金額で14.6%と大いに「盛り下がって」いる。新製品効果もあって、この夏から秋にかけては多少活気が戻る可能性が高い。しかし、そう長く続くことはないだろう。カメラもレンズもまだまだ大きく、重いからだ。大きさ、重さをものともせず、高価なカメラと巨大なレンズを喜んで果敢に買う層は年々減少している。  もう一つ、大きな問題がある。キヤノンもニコンも、もちろんソニーも、今回の新製品では、コロナやアフターコロナ、ニューノーマルは全く考慮されていないからだ。コロナ禍のデジタル家電で、最も大きな打撃を受けたのはレンズ交換型デジタルカメラだった。  その中でも、さらに最も大きな打撃を受けたのがフルサイズのミラーレス一眼だ。4月の前年同月比がなんと19.8%、5月も19.3%と実に8割を超えるマイナスになる「緊急事態」に陥った。6月は、58.6%と4割減の水準まで回復。事態は、一服しているものの、依然大幅マイナスであることに変わりはない。  コロナを境に、カメラに求められる姿がさらに激変してしまうかもしれない。そろそろカメラという概念を一旦リセットして、ゼロから考え直す時期なのではないか。メーカー各社には、一歩「外に」踏み出す勇気を期待したい。(BCN・道越一郎)

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