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それでも実名報道が大切な理由 桶川ストーカー事件の被害者遺族に聞く(2)

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FNNプライムオンライン

実名報道はなぜ批判されるのか。第1回では犯罪被害者に寄り添う「犯罪被害者支援弁護士フォーラム」の髙橋正人弁護士に話を伺いました。髙橋弁護士が実名報道を問題視する理由に、名前が分かることで本人や家族・関係者への過熱取材、メディアスクラムが起きることをあげられました。 【画像】1999年10月 桶川ストーカー事件の現場 そこで実際にメディアスクラムの被害にあった埼玉県の猪野憲一さん、京子さん夫婦に話を聞きました。ご意見は2回に分けて掲載します。猪野さんは桶川ストーカー事件の被害者遺族です。

人には名前とともに歩んだ人生がある

ーーもし、警察が事件の被害者が「猪野詩織」さんと実名で発表しなかったら、「被害者・埼玉県上尾市のAさん」だったら、マスコミも誰が亡くなったかわかりません。そうしたら、お話いただいたような報道被害を受けることもなかったのではないでしょうか? 憲一さん: それは確かなんですよ。もしも警察が被害者の名前を発表していなかったら、自宅に大挙してマスコミもこなかったし、それは二次被害として当然、極めて、軽くすんだのかな、という思いはあります。 ただし、私自身は、詩織の人格や、詩織が生きてきた人生、まっ、たかだか21歳でしたけど、でも、詩織の人生は“A市のB子さん”では片付けられないです。そんなことはないですよ。「猪野詩織」として生まれた人生があって、人格もあるのに、それを匿名にする必要は全然ないです。 匿名にするのは、私自身は非常に違和感を抱くんです。そうではないだろう、と。その人を知っている人たちは、「ああ、あの子はこういういいところがあったよね」、「あの子とは小さい頃、遊んだんだよ」とか思うだろうし、その人には名前とともに歩んだ人生があるんです。A子さんとかB子さんとかいうのは私としては失礼にあたるんではないかと思います。 京子さん: 偶然、事件現場…あそこ、通りたくないんですけど、このあいだ(2020年1月頃)通ったときに、お父さんと息子さんが手を合わせていたのを見て、ああ、こういう人たちがいるんだなって思いました。若いお父さんが小学生くらいの男の子に説明していて「手を合わせようね」って。 まさか手を合わせている人がいるなんて思わなかったので、思わず涙が出そうになりました。知らない顔して横を通りましたけど。それも「猪野詩織」の本当の姿を報道されたからだと思います。 憲一さん: 京都アニメーションの犠牲者は日本だけじゃなく、世界にも発信できているような人たち。ウチの娘、ウチの息子はこんな立派な仕事をしていたのに、それなのにこんな変なやつに殺されてしまった、許せない、そういう捉え方のほうが、彼や彼女が生きてきたことを、しっかりと賛美してあげることにもなると思うんです。 それに仕事の苦労って親に言わない場合が多いんじゃないですか。親の前では「楽しいよ、楽しいよ」。でも本当は苦しさがある。それを悩みながら克服しているかもしれない。 犠牲者のそういう事実、本当の姿を探ってほしいし、そういうことができるのは誰ですか、と考えたとき出てくるのはマスコミだろうと思っています。すごく立派な誇らしい仕事をやっていた京アニの人たちがほとんど匿名だというのは寂しい気がしますね。

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