『キングダム ハーツ』20周年記念イベントリポート。野村哲也氏の振り返りやソラ役入野自由さん、カイリ役内田莉紗さんの思い出トークなども
取材協力:堤教授 2022年4月10日、渋谷ヒカリエ9F ヒカリエホールにてスクウェア・エニックスが『キングダム ハーツ』シリーズの20周年記念イベント“KINGDOM HEARTS 20th ANNIVERSARY EVENT”を開催。本稿では、同イベントの内容について順を追ってまとめて紹介。イベントは3時間たっぷり行われたため本記事も長文だが、気になるところだけでも読んでいただければ幸いだ。 【記事の画像(45枚)】を見る 野村哲也氏がシリーズを振り返る イベントはシリーズのディレクターを務める野村哲也氏が20年を振り返る映像からスタート。なお、映像には会場のヒカリエを含む渋谷の映像などが使われており、いま思えばこれが『キングダム ハーツIV』への伏線になっていた。 『キングダム ハーツ』を開発する際の信念は20年経っても変わらず 20年経っても変わらないことは、“『キングダム ハーツ』を作るということはこういうことだ”という信念だという野村氏。それゆえ、ほかのどのタイトルよりも妥協せず、開発に対しても厳しいという。こだわりを持って開発しているがゆえに、ここまでの人気作になったのだろう。 プレゼン用の初期映像が公開 ディズニーに『キングダム ハーツ』の企画をプレゼンするときの資料として作成した期の映像が初公開(今後公開されるアーカイブ映像には収録されないとのこと)。ラフに作ったデスティニーアイランドで初期のデザインのソラたちが走ったり戦ったりする映像となっており、「開発前にここまでのものを用意するということはない」とのことだが、初ディレクション作品、加えてディズニーの承諾を得る必要もあるので、かなり気合を入れて準備をしたという。 デスティニーアイランドについては、野村氏が海のそばで生まれ育ったという経験が色濃く反映されているという。「歩いて5分くらいの距離に海があって、海と空しかないところでしたし、中学や高校のころは、友だちとよくアイスを食べながら自転車で帰ったりしていました。そういう、学生時代の経験がいろいろ刷り込まれ、それが作品に出ている感じがありますね」(野村氏)。 『キングダム ハーツ』シリーズの楽曲では初となる室内楽アレンジで生演奏 野村氏の映像の後は、シリーズの名曲の数々の中から厳選された5曲が20周年記念イベント用のアレンジで生演奏。 01.Dearly Beloved 02.Sora 03.Vector to the Heavens 04.Nachtflugel(※) 05.Link to All ※Uはウムラウト記号 演奏後はカイリやシオン役を演じ、本イベントの進行役を務める内田莉紗さんと『キングダム ハーツ』シリーズのコンポーザーの下村陽子氏が登壇。下村氏は今回の生演奏について、20周年の記念すべきイベントということで、『キングダム ハーツ』シリーズの楽曲では初となる室内楽(少人数編成の重奏)のアレンジに挑戦したという。 選ばれた曲については、人気楽曲であることはもちろん、作品に偏りが出ないように配慮。さらに生演奏したことがない新しめの曲ということで『Nachtflugel』もチョイス。 『キングダム ハーツ』の20年を振り返り、楽曲作りやコンサートでさまざまな思い出があるという下村氏。今後については、「やりたいことはいろいろ考えていて、またいつかコンサートもできたら」と意欲を見せていた。 20周年記念イラストはイベント当日朝10時に完成 続いては野村哲也氏とシリーズのブランドマネージャーの間一朗氏が登壇。13作品に及ぶシリーズの20年の軌跡などが紹介され、シリーズ全体の世界累計販売本数は3500万本、『キングダム ハーツIII』は670万本(2021年9月時点)と発表。 そんな『キングダム ハーツ』20周年を記念した野村氏の描き下ろしイラストが会場で展示されていたが、完成はイベント当日の朝10時だったという。なお、イベント前に展示されていたイラストは『キングダム ハーツIV』のソラが隠された状態になっていた。 20周年を記念したさまざまなグッズが発売 『キングダム ハーツ』20周年を記念したさまざまなグッズも多数展開される。詳しくは下記の関連記事や『キングダム ハーツ』20周年関連商品特集ページでチェックしてほしい。 『キングダム ハーツ』江戸切子グラスや天然石を選べる指輪、キーブレード型ライトなどをチェック! 20周年を記念した関連商品の特集ページ公開 https://www.famitsu.com/news/202204/11257849.html 『キングダム ハーツ』×たまごっちのコラボ商品が予約開始。ソラやドナルド、グーフィーたち20以上のキャラクターを育成できる! https://www.famitsu.com/news/202203/28256194.html 『キングダム ハーツ』20周年を記念したメガネが登場。ソラやリクなどの登場キャラをイメージしたモデルも。Zoff公式オンラインストア限定で販売 https://www.famitsu.com/news/202203/24255740.html 『キングダム ハーツ』20周年記念の発表まとめ。20周年イベントが開催&一番くじの発売決定。『ダーク ロード』エンディングまで配信なども https://www.famitsu.com/news/202110/06236312.html 『キングダム ハーツ ダークロード』8月に完結まで一挙無料配信 『キングダム ハーツ』シリーズの重要人物、マスター・ゼアノートが、なぜ闇の探求者になったのかが明らかになるスマホ向けゲーム『キングダム ハーツ ダークロード』。キーブレード使いとなるべく修行中のゼアノートの少年時代が描かれる本作は、2021年4月30日にサービスを終了し、オフライン版へ移行となることが発表されていたが、今年8月、完結まで一挙無料配信されることがアナウンスされた。 物語は当初の予定からさらに加筆が入り、野村氏曰く「いろいろと皆さんが疑問に思っていたことが『キングダム ハーツ ダークロード』で解消されるはずです」とコメント。 なお、『キングダム ハーツ ユニオン クロス』はすべてのストーリーがシアターモードで楽しめるオフライン版が配信中だ。 『キングダム ハーツ ダークロード』8月に完結までの一挙無料配信が決定 https://www.famitsu.com/news/202204/11257845.html 『キングダム ハーツ ミッシングリンク』は『ユニオン クロス』と『ダークロード』の間の時代が描かれる 『キングダム ハーツ』シリーズの新作スマホアプリとして発表された『キングダム ハーツ ミッシングリンク』。物語は『キングダム ハーツ ユニオン クロス』と『キングダム ハーツ ダークロード』の間の時代が描かれる。 本作は最大6人のマルチプレイ、縦横両画面対応のほか、現実の世界とリンクしたマップを探索することができるという。必ずしも歩き回る必要はなく、自宅に居ながら世界中のどこへでもアクセスすることも可能とのこと。「拠点みたいな場所があって、そこからワールドマップに出て、ピースを集めつつ冒険します。拠点からクエストに出発することができて、クエストを進めるとストーリーも進んでいきます。クエストとワールドマップのふたつが遊びの主軸です」(野村氏)。集めたピースをキーブレードにセットすると能力がアップ。「ピースというのはトレーラーでも技を使ったときにちらちらと出ていたフィギュアみたいなヤツです」(間氏)。 「来は行きたくてもたどり着けないような場所にも行けるので夢があります。歩ける範囲しか行けないようにするよりも、好きなところに行けるほうが『KH』らしいかなと思うので。世界観に付いては追ってお話しますが、ブレインはムービーにでていましたね」(野村氏)。なお、映像でブレイン(『キングダム ハーツ ユニオン クロス』に登場するユニオンリーダーのひとり)が登場すると、会場からは悲鳴に近い歓声が。 スマホ『キングダム ハーツ ミッシングリンク』発表。シリーズ空白の時代を描く新作で、位置ゲーや最大6人マルチプレイの要素も https://www.famitsu.com/news/202204/10257839.html (かなりマニアックな)Q&Aコーナー イベントではSNSなどを通じて募集したファンからの質問に、野村哲也氏が答えるQ&Aコーナーも。このコーナーは下の別記事にてお届けしているので、合わせてチェックしてほしい。 『キングダム ハーツ』20周年記念イベント内のQ&Aコーナーで、シリーズのマニアックな質問が続出! 野村哲也氏の回答とセットでリポート https://www.famitsu.com/news/202204/11257884.html ソラ役の入野自由さん、カイリ役の内田莉紗さん、そして音響監督の清水洋史さんによるトーク イベント後半ではソラ、ヴァニタス役の入野自由さん、カイリ、シオン役の内田莉紗さん、そして学生時代からふたりをよく知る音響監督の清水洋史さんの3人により、収録にまつわるエピソードなどが語られた。 『キングダム ハーツ』の収録時は、入野さん、内田さんともに中学生。ふたりともオーディションを受けたそうで、内田さんは「オーディションではデスティニーアイランドのシーンのセリフがあったんですが、当時、海の近くに住んでいたので、住んでる海の情景を思い浮かべながらセリフを言いました。海が大好きなので、絶対この作品やりたい、と思ってオーディションを受けたのをよく覚えています」(内田さん)。 一方の入野さんはオーディションについてはあまり覚えておらず。「何も覚えていないところがソラっぽいですよね?」と苦笑い。 そんなふたりの印象について清水氏は「まだ怖いもの知らずの13歳、14歳で、それはもうソラとカイリそのまま。演出してどうこうなるものじゃない」と、ふたりの年齢的なものもソラ、カイリにハマっていたと述懐。 ちなみに、清水氏は『キングダム ハーツ』の最初の印象について、ソラ、カイリ、リクという『キングダム ハーツ』のキャラクターと、王様やドナルド、グーフィーといったディズニーのキャラクターが同じ画面の中に存在して、いっしょに喋り合う。あまつさえ、それ以外のディズニーの作品の世界に行く。世界やカルチャーがまったく違うキャラクターどうしの掛け合いが頻発することに、「最初に聞いたときは卒倒しそうになった」という。だが、やっているうちに、だんだんそのおもしろさに気づかされたという。 ソラ、カイリときたら忘れてはならないのがリク役の宮野真守さん。本イベントには都合により出席できなかったが、代わりにビデオコメントが届いていた。以下、コメントを抜粋。 『キングダム ハーツ』シリーズは僕の人生を作ってくれた作品 本屋でバイトしているとき、インタビューが載っているアルティマニアが目立つように前に出した。 舞台で莉紗さんと共演できてうれしかった 『キングダム ハーツ』の「どうしたソラ、もう終わりか? だらしないな」というリクのセリフが大好き またリクを操作できるようなタイトルが出てきたらうれしい 今後も広がっていく『キングダム ハーツ』の世界を皆さんもいっしょに楽しんでもらいたい 清水氏の宮野さんの印象は、少し悩みを抱えていたり、世界を懐疑的に見ている時期もあったり、そういう意味でもいちばんリクが適役だった感じたという。一方で入野さんと内田さんは「楽しい!」という思いだけでやっていたと言い、まさに『キングダム ハーツ』の役柄と同じような性格、そして同じような3人の関係性だからこそ、20年以上も仲よくやっていけているのだろう。 また、役柄がぴったりハマっているという点では、入野さんとロクサス役の内山昂輝さんの“ある共通点”に興味深いエピソードが。清水氏によると、「噛んだり、上手くいかなかったりすると、先生の顔を見るように恐る恐る振り向く子が多いんだけど、入野くんと内山くんだけは、子どものときから振り返らなかった。大人の反応を気にするより、できなかった自分を悔いていた」という。ロクサスはソラの分身とも言える存在だけに、演じているふたりにそんな共通点があったというのもおもしろい。 最後に清水氏は『キングダム ハーツ』シリーズで長年アクセル役を務め、2020年に他界された藤原啓治さんについての思い出を紹介。「「おまえらが何度逃げようが 俺が何度だって連れて帰ってやる!」。このセリフを録ったとき、鳥肌が立ったのですごく覚えているんです。私は客観的に見る必要があるので、のめり込んで感動しないように努めているんですが、このときだけは、ちょっと感動しちゃいまして。藤原さんは本当に取り組み方がすごくて、あるセリフを70回くらい録ったことがあるんですが、それでもイヤな顔ひとつせず、演じてくださいました。20年のあいだにいろいろな方と出会い、皆さんへの感謝、そして藤原さんへの感謝を伝えようという想いで今日、ここに参りました」。20年という時間のなかで変化を余儀なくされることも起こり、あらためて20年という重みを感じさせられるが、それだけに毎作毎作、いちプレイヤーとしても感謝の気持ちを忘れずにプレイしていきたい。 『キングダム ハーツIV』について イベントの終盤に公開されたのが『キングダム ハーツIV』。家庭用ゲーム機向けらしきクオリティーの映像が流れると、会場はザワザワし始め、ソファーで寝ているソラが映ると、悲鳴に近い歓声が挙がっていた。本イベント内で判明した情報については、下記の記事にてお届けしている。 『キングダム ハーツ4』続報はいつ? UE5での開発やヨゾラが登場する『VERUM REX』の話題も https://www.famitsu.com/news/202204/11257883.html 宇多田ヒカルさんからメッセージ サプライズとしてテーマソングを歌う宇多田ヒカルさんからのビデオメッセージが公開。『キングダム ハーツ』シリーズの歌は日本語版と英語版の両方を書くという作業があり、「難しいは難しいんですけど、すごく特別な作業」になっているという。また、自身はRPGなどはあまりプレイしたことはなく、『キングダム ハーツ』もプレイしたことがないとのことだが、息子さんがゲームをプレイさせてもいい年齢になったらいっしょにプレイしてみようかと思っているとのこと。 前ブランドマネージャーの橋本真司氏コメント、イベント締め括りの代表者挨拶も 会場には前ブランドマネージャーの橋本真司氏も来場しており、ステージに登壇。「思い起こすと、ディレクターの野村も含めて、数名でアメリカに出張し、プレゼンをしたり、打ち合わせをしたり、契約書を交わしたりと、いろいろな階段を上って、気が付いたら20年。全世界の皆さんに愛される作品になって、次の世代にバトンを渡せたことを本当に幸せに思っております。『キングダム ハーツIV』を筆頭に、これからますます『キングダム ハーツ』の世界は広がっていくと思いますので、これからも応援のほどをよろしくお願い申し上げます。どうもありがとうございました」と挨拶し、盛大は拍手を受けていた。 イベントの最後には出演陣が再度登壇。代表して入野さん、間氏、野村氏からひと言ずつ謝意な述べられた。 20周年を迎えられたということ自体が、不思議な感覚です。中学生だった自分は、こんな風になるとは思っていませんでしたし、いまこうしてここに立っていられることを、本当にうれしく思います。キャストを代表して、皆様にお礼を伝えたいと思います。本当にありがとうございました。そしてこれからも、よろしくお願いします(入野自由さん) 本日はたいへんユルい感じでやらせていただきましたが、モノ作りに関しては非常に真摯なメンバーが制作を続けております。『キングダム ハーツIV』はもちろん、他も含めて今後とも『キングダム ハーツ』シリーズをよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました(間一朗氏) いま発表できるものはすべて今日で出し切ったので、しばらくは何もありません。ですが、裏では着々といろいろなものが進んでおります。『キングダム ハーツ ミッシングリンク』も、長い時間をかけて温めてきましたし、『キングダム ハーツIV』も、まだまだ時間はかかると思うんですけど、スゴいものに仕上がると自分で思っておりますので、今後も続報を待っていただければ。次は、25周年で皆様の前に立てればと思っております。今日は、本当にありがとうございました(野村哲也氏) 3時間に及んだ20周年記念イベント。コロナ禍などの影響もあり、参加できたファンがひと握りだったとのが何とももったいないくらいの盛りだくさん感。『キングダム ハーツ』の開発はギリギリまで妥協を許さないきびしさがあるというが、そのスピリッツはイベントなどにも貫かれている印象。そして『キングダム ハーツIV』より新たに始まる“ロストマスター篇”。その物語がどんなものになるのか。続報を期待して待ちたい。 後日、アーカイブ映像が公開予定 イベントの模様は、後日メモリアル映像として公開予定とのこと。イベントの様子や会場の熱気などをよりリアルに感じられるはずだ。 展示物を一挙紹介 さまざまな仕掛けも施された一日限りの展示。野村哲也氏の原画や懐かしの新聞広告など、20年の歴史が感じられる展示となっていた。
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