リアルかオンラインか、音楽フェスの行方を探る。
コーチェラやグラストンベリーといった大型音楽フェスが、現時点(2021年2月)で今年の開催の見送りを発表している。しかし、ネガティブな話題ばかりではない。さまざまな国内外のフェスを10年間駆け巡った筆者が、ウィズコロナ時代に期待できる側面を考察する。
夏までの数ヶ月の間に、数十万人規模の見知らぬ人が密接する音楽フェスを安全に開催できる状況にはならないだろう。そもそもフェスは決して衛生的な環境とは言えず、特に新型コロナウイルスが蔓延している今、クラスターの原因になることは容易に想像ができる。たとえ世界中の消毒剤をかき集めても、グラストンベリーの会場を除菌し尽くすには足りないだろう。 毎年3月にテキサス州オースティンで開催されるサウス・バイ・サウスウエスト、4月は大勢のモデルやセレブたちも集まるカリフォルニア州のコーチェラ。6月はイギリスのグラストンベリーやスペインのプリマヴェーラで、ヨーロッパのフェスシーンが盛り上がりを見せていた。8月には日本最大の野外フェス、フジロックが開催され、国内外の参加者がキャンプをしながらアーティストたちの演奏を自然の中で堪能していた。そして皮肉にも、コロナ・キャピタルと言う名のメキシコのフェスは、毎年180万人ほどが集まる大陸最大級のイベントだった。
しかし、今年はすでに雲行きが怪しい。1月にグラストンベリーのオーガナイザーのマイケル&エミリー・イーヴィスが2年連続での中止を発表し、今月にはコーチェラの中止も明らかとなった。 大型フェスの中止が続出するなか、小規模なイベントにはまだ望みがあるかもしれない。オランダ発のテクノ&ヒップホップフェスのフロンティアは、入場時にワクチン接種証明書、または陰性の検査結果提示を求めるという条件で開催許可を得ている。5月にフロリダで開催予定のフロントヤードフェスティバルでは、参加者の鑑賞方法を高架上の個室ボックスにすると発表した。また、スペインのプリマヴェーラは、ソーシャルディスタンス規定を設けていない大規模イベントでの抗体検査の効果を調べる「PRIMA-CoV臨床試験」を現在進行している。この結果次第で、開催有無が明らかとなる。このように、ネガティブな話題ばかりではない。小規模なイベントに注目が集まり、オンライン開催がより一層盛り上がりを見せるかもしれないのだ。