36年の歴史に幕を下ろす「スバル・レガシィ」の歩みを振り返る
2025年3月にアウトバックの受注を終了
4代目において、日本のユーザーから見て「素晴らしい!」と言いたくなる仕上がりとなったレガシィだったが、2009年5月に登場した5代目レガシィは“北米志向”を鮮明にした。 4代目で初めて3ナンバーサイズとなったボディーはさらに拡大され、ツーリングワゴンの場合で全長が4775mm(先代比+95mm)、全幅が1780mm(同+50mm)、全高が1535mm(同+65mm)、ホイールベースは2750mm(同+80mm)と、完全にひとクラス上のサイズに至ったのだ。 要するにこれは北米ユーザーやその使い方を優先した結果の“改善”であり、それ自体は致し方ないというか、スバルのグローバルビジネスを考えれば当然ともいえる処置だった。 しかし──それが北米マーケットの好みなのか、やや厚ぼったくて派手めなフロントマスクと、2リッター水平対向ターボのEJ20型エンジンが廃止となったことに、日本の多くのユーザーは落胆。結果として国内における販売は、従来型と比べて明確な低空飛行状態となった。アプライドD型で2リッター水平対向直噴ターボのFA20型を投入したが、起死回生の一打とはならなかった。 2014年10月に登場した6代目レガシィではツーリングワゴンが廃止されてセダンのB4とアウトバックのラインナップになった。アウトバックは北米市場の声に応えるようにボディーサイズをさらに拡大し、全長4795mm、全幅1840mmに。インテリアもアメリカナイズされた豪華絢爛(けんらん)なテイストに変更された。 続いて2019年2月に発表された7代目レガシィは、レガシィ アウトバックのみが国内で発売された。そしてそのアウトバックも2025年3月での受注終了が発表され、1989年から36年に及んだレガシィの日本における歴史は幕を閉じることとなった。 初代から4代目までのレガシィは、ある意味たまたま「グローバル市場からの要求」と「日本人ユーザーが求めるレガシィ像」がおおむね一致していた。それゆえ日本人からも愛され、大ヒットした。5代目以降は北米シフトを敷くようになってしまったわけだが、ビジネス戦略としてのそれを非難することなどできまい。スバル・レガシィは、グローバル規模の市場経済にも基づく当然の経営判断として、北米優先の仕立てに変わっていったのだ。 恨むべき対象はスバルではなく、スバルの意思決定を方向づけた「わが国の国力低下」なのかもしれない。 (文=玉川ニコ/写真=スバル/編集=櫻井健一)
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