36年の歴史に幕を下ろす「スバル・レガシィ」の歩みを振り返る
世界速度記録とともに華々しくデビュー
初代「スバル・レガシィ」が登場したのは、R32型「日産スカイラインGT-R」や初代「マツダ(ユーノス)・ロードスター」などの誕生と同じ1989年。レガシィもまた、国産車のビンテージイヤーに生まれ落ちた名作だった。 【写真】2025年3月末の受注をもって国内での販売に幕を下ろすスバル・レガシィの歴代モデルをもっと詳しく見る(15枚) スバルが初めて“世界”をターゲットにつくり上げたとされる初代レガシィは、車体をゼロから開発。水平対向エンジンや4WDの駆動系といった基本的なメカニズムはレオーネから受け継がれたが、WRCで活躍したグループAマシン「レガシィRS」のEJ20ターボをデチューンした2リッター水平対向ターボエンジンを筆頭とする全パワーユニットが、気筒あたり4バルブ化されたDOHCと電子制御式インジェクションを併せ持つ新設計だった。 発売直前の「レガシィRS」は、米国アリゾナにおいて1989年1月2日から19日間連続で10万kmを走り続ける世界速度記録に挑戦。そして見事に平均時速223.345kmを達成し、“スバル・レガシィ=ハイパフォーマンス”というイメージの構築に成功した。またセダン以上に人気を集めた「レガシィ ツーリングワゴン」は、折からのバブル景気もあって“ハイパワー4WDワゴンブーム”の発端になり、スバル(当時は富士重工業)を経営危機から救う役割を果たした。 初代レガシィ ツーリングワゴンがつくり上げた“ハイパワー4WDワゴン神話”は、1993年10月に登場した2代目によってより強固なものとなった。シャシーの基本構造は初代モデルを踏襲していたが、5ナンバー枠をキープしつつも後席居住性を大幅に改善したことで、2代目レガシィ ツーリングワゴンは大ヒットを記録。また「GT」と「GT-B」に搭載された2リッター水平対向4気筒ターボは「2ステージターボ」化により最高出力が250PSとなり、1996年のマイナーチェンジでGT-Bの5段MT仕様車は280PSに。4段AT仕様車も最高出力260PSに進化し、イエローに塗られたビルシュタイン製ショックアブソーバーの高機能なイメージとあわせ、この時点で“レガシィ=超高性能ステーションワゴン”との印象は決定的になったように思う。 ちなみに、2025年3月末で受注終了となる「レガシィ アウトバック」の初代モデルが登場したのも、2代目レガシィが販売されていた1994年から1995年にかけてのことだった。2代目レガシィの車高を上げてクロスオーバーSUVに仕立てた派生モデルは、北米では「スバル・アウトバック」として1994年に発売され、日本国内では「レガシィ グランドワゴン」を名乗り、2.5リッターの水平対向4気筒エンジンを搭載して1995年8月に登場した。