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「自分を犠牲にしても闘う」のはなぜ? 葛藤しながら取材 香港在住記者レポート

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The Guardian

【記者:Verna Yu】  香港で続く政治的危機は、これまでの私の人生でおそらく最大の苦難だ。よく眠れず、食欲がなくなり、他に何も考えられなくなる状態が数か月間続いた記憶は他にない。多くの香港市民同様、この5か月間は、自分の街が数日ごとに紛争地帯に変わっていく様子を見て、激しい無力感と不安にさいなまれてきた。  取材に出掛けるたびに、子どもたちが注意を促してくる。「ママ、気を付けて!」。かばんにヘルメットとガスマスクを詰めるたびに、まるで戦場に向かうような気分になる。  中国本土への容疑者引き渡しを可能とする「逃亡犯条例」改正案に反対する平和的な抗議活動が6月に始まり、その後拡大し、次第に過激な反政府運動へと変容していく中、感情はジェットコースターに乗っているように激しく揺れ動いた。  中国の統治下にある香港政府に対し、市民は積年の怒りと不満を爆発させた。香港政府は、市民の負託には応えない代わりに中国政府への釈明義務を負っている。  香港政府が10月、覆面着用を禁止する緊急条例を施行したときは、多くの人が、立法府を無視して市民の自由をさらに締め付ける独裁的支配の始まりと受け止めた。  不吉な合図だった。これが転機だったのかもしれない。  地下鉄が当局により閉鎖されると、香港は非現実的な不安感に包まれた。店舗はシャッターを閉め、子どもたちの週末のイベントは中止となり、公共の娯楽施設はすべて閉鎖された。  11月中旬、警察とデモ隊の対立はエスカレート。朝のラッシュ時に警官がデモ参加者1人を実弾で撃ち、警察が大学構内に突入して学生たちと暴力的な衝突を繰り広げ、市内のほとんどの機能がまひした。道路はデモ隊と警察によって封鎖され、多くの路線バスや地下鉄は運休し、地下鉄駅は閉鎖された。  衝突が発生するたびに、多くの人は自宅に足止めされて出勤できなくなる。学校は閉鎖され、大学は早めに学期を終了した。職場にたどり着くことができても、果たして帰宅できるのかと不安になる。金融街では、11月中旬にデモに加わった会社員らに警官が催涙ガスを噴射して以来、多くの人が昼休みにランチに出掛けるのをやめた。レストランや店舗は早めに閉店し、コンサートやイベントも中止または予定を切り上げて終わるため、社会生活は停止している。多くの人にとって、事実上の外出禁止令だ。  あらゆる市民の生活が一変した。感情が高ぶり、人間関係もぎすぎすし、家庭や友情にひびが入る。親子は会話をしなくなり、カップルは疎遠に。食事の場で政治の話を避けようとしても、大抵は失敗に終わる。何げない会話が激しい言い合いに発展する。民主派の「黄色」側か、親中派・親政府派の「青色」側かが分かれ目になる。

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