直木賞受賞の門井氏「風が来た、飛ぶだけだ。そういう気持ち」
第158回芥川賞・直木賞が16日夜、発表され、「銀河鉄道の父」で直木賞を受賞した門井慶喜(かどい・よしのぶ)氏(46)は、「風が来た、飛ぶだけだ。そういう気持ち」と独特の表現で喜びを語った。直木賞にはこれまでも2015年刊の「東京帝大叡古教授」、2016年刊の「家康、江戸を建てる」が候補作に選ばれており、三度目の正直での受賞となった。
受賞作には「銀河鉄道の夜」「セロ弾きのゴーシュ」などを著した宮沢賢治と、その父である宮沢政次郎が登場する。「お父さんから見た賢治を書こうと思って書き始めたが、だんだん賢治のことも気になるようになり、父と息子の関係、さらにはもっと広く親子関係を書くようになりました」。 賢治については「物書きは一緒に暮らすと厄介。書くものは天才だと思うが、1人の生活人としてみると成功者ではない」と同じ作家として手厳しいが、「僕自身は自分のことを厄介だとは思わないが、恐らく家族はそうは言わないでしょう」と笑った。 記者からは女性への視線が温かくて自然だという指摘も。「心理を想像することに、あまり意識して男女差をつけるタイプの作家ではありません。人間はどこか普遍的なものがあり、男性でも女性でも老人でも若者でも本質的なところには変わらない」と分析する。 歴史好きだったという父がつけた慶喜という自身の名前は、「子どものころは、毀誉褒貶の激しい徳川慶喜と同じ名前が、あまり好きになれなかった」と告白する。ただ今は「慶喜という名を与えられた時点で、『歴史』を仕事にすることが運命づけられていたように思える。これまで一貫して『歴史』に関わる小説を書いてきたし、それは今後も変わらない」と述べ、感謝した。 (取材・文:具志堅浩二)