ウクライナ侵攻開始から1000日、戦時下に生まれた「戦争しか知らない」子どもたち
エフヘン・ステパネンコちゃん(2)は2年前、ウクライナ首都キーウ近郊ブチャで生まれた。すぐ外にはロシアの戦車が停車していた。 ウクライナで戦時下に生まれた何千人の子ども─「戦争しか知らない」子どもたちの1人だ。 現在、自宅のリビングで駆け回る姿は、他の子どもと全く変わらない。ただ、母親のリュドミラ・ロドチェンコさんは2022年3月の出産当時、こうした生活は想像もできなかったと話す。 エフヘンちゃんは2022年3月にブチャで誕生。ロドチェンコさんは出産前、道端に散乱する複数の遺体を見たと振り返った。 「次の日どころか数時間後さえ、何が起きるかわからなかった」 数週間後、ブチャの路上では、民間人とみられる多数の遺体が発見され、ロシア軍よる残虐行為が行われたとみられる場所として知られるようになった。ロシア政府は民間人の殺害を否定。ブチャの現場は「ねつ造」だとしている。 ロシア軍がブチャを占領すると、母ロドチェンコさんは、エフヘンちゃんと3人の子どもたちを連れて避難した。 「彼は本物の、小さな英雄だ。生後わずか3日で、困難な旅を経験した。毛布にくるまれ、顔さえ見えなかった。寒さと霜に耐えたのだ」 ロドチェンコさんは、戦争が今後何年も続く可能性があると懸念する。ウクライナからの出国も考えたが、多大な困難と費用を要することがわかったという。その後、一家は安定を求めてブチャに戻った。 「空襲警報にばかり気を取られず、普通の子ども時代を過ごせるように努めている。ただ、携帯電話で空襲警報が鳴ると『ママ怖い、怖いよ』と言うし、警報がやめば『警報解除』と言っている。それらが何を意味するのか、息子は完全にはわかっていないと思う」