「どうしたら国を守れるか」であって「どうしたら憲法を守れるか」ではない
外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が5月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。衆院憲法審査会で意見が対立した憲法9条への自衛隊明記について解説した。
衆院憲法審査会、憲法9条への自衛隊明記で対立
衆院憲法審査会は5月19日、安全保障をテーマに討議を実施した。自民党の新藤義孝氏は、自民党の憲法改正案4項目に盛り込んだ憲法9条への自衛隊明記について議論を進めるよう提起したが、立憲民主党の奥野総一郎氏は、自衛隊の役割が不明瞭などとして反対を表明。意見の対立が改めて鮮明になった。 飯田)公明党は、現在の9条1項、2項は堅持した上で、総理や内閣の職務を規定した72条や73条に、自衛隊への民主的統制を明記すればいいのではないか、と提案したということです。
憲法問題についての議論が1960年代から成長していない
宮家)1960年代の議論とどこが違うのでしょうか。進化しているのだとは思いますけれどね。例えば「敵基地攻撃能力」がありますが、あれは1956年の議論ですからね。 飯田)当時の鳩山政権が「座して死を待つなかれ」と。 宮家)思考停止ですよね。1960年代から、もう60年ほど経ちます。日本を取り巻く国際関係、使い古された言い方ですが、脅威は間違いなくあります。ロシアを見ればわかるけれど、この地域でも、そういうことが起こり得るというのが現状の流れです。 飯田)力による現状変更が起こり得る。 宮家)そのようなときに、なぜ憲法問題についての議論が60年間変わらないのか。まったく進歩していないではないですか。特に野党です。安全保障関係者や企業の人たちも、この国を守りたいのですよ。そして、この国がやらなければならないことは何かと言ったら、議論ではないでしょう。 飯田)何が必要で、そのために何が障壁になるのかという議論ではなく、文言をどういじるかというところばかりに終始しているのですよね。
ウクライナを侵攻するロシアのような国がある限り、その準備だけはしておかなくてはならない
宮家)「何が必要かという議論をしたくない人」が、それ以外の議論をしているだけなのです。そんな感じがします。確かに憲法を守りたい方の気持ちはわかります。戦争は私だって嫌です。でも、ウクライナ情勢を見ればわかりますが、攻めてくる勢力はいるのです。「やめてくれ」と言ってもやめません。ロシアを見てください。みんなで寄ってたかって「やめろ」と言ってもやめないのだから。 飯田)事前から言っていたのに。 宮家)そういう国がいるのだから、準備だけはしなければいけないのです。この議論も、もう少し進化してもいいのではないでしょうか。