滋賀県名物『サラダパン』 たくあん&マヨネーズで“サラダ”のワケ 当初不評も40年で今や人気は全国区
滋賀県の名物グルメ「サラダパン」。歯ごたえ抜群の千切りたくあんをマヨネーズであえて、コッペパンにはさむという独創的な総菜パンです。 【写真】今や大ヒットロングセラーの「サラダパン」 気になる中身を見てみる 滋賀県ではスーパーや道の駅などでも販売されるほどポピュラーですが、よくよく考えてみると、なぜ漬物のたくあん&マヨネーズで「サラダ」なのでしょうか? サラダパンの生みの親である「つるやパン」(滋賀県長浜市、以下、つるや)の専務・西村豊弘さんに詳しく話を聞きました。 つるやが生まれたのは1951年のことでした。創業者の西村秀敏さんは、大学の恩師から受けたアドバイスをきっかけに、故郷・木之本(旧・滋賀県伊香郡、現・長浜市)にまだ無かったパン屋を開くことに決めたのだとか。 まだ戦争の傷が癒えない時期。秀敏さんは、戦争を知らない子どもたちにパンを食べてもらいたいという思いから、店名に“動物”を入れることを決めます。そして近隣にあった「はとや」と「かめや」から連想し、「つるや」という店名に落ち着いたそうです。 やがて、開店して数年後のこと。秀敏さんの妻・智恵子さんが、お客さんから「おにぎりの代わりになるようなパン」を求められたことをきっかけに生みだしたのが「サラダパン」でした。 じつは、今のサラダパンは2代目。初代サラダパンは、マヨネーズであえたキャベツをパンに挟んだものでした。当時まだ珍しかったサラダ油を使った調味料・マヨネーズと、胃腸に優しいとされる野菜・キャベツを使った「サラダ油パン」、そこから転じて「サラダパン」と名付けられました。 初代サラダパンは人気を博しましたが、日持ちがしないことから1年弱ほどで販売中止に。せっかく作った黄色のパッケージも大量に残ってしまいます。そこで智恵子さんが「日持ちして、マヨネーズに合う具はないか」と考え、ぴったりマッチする素材が「たくあん」だったというわけです。 それにしても「マヨネーズであえたたくあんをパンにはさむ」という、なかなかインパクト大なパン。当時のお客さんの反応が気になるところですが……。 「1962年の発売当時は不評だったそう。(売り上げも)1日15~20個ほどと、あまり売れなかったと聞いています。ただ『どうしても食べたい!』というコアなファンがいたそうです」(西村さん) 転機は、販売開始から40年ほど過ぎた2000年頃。スーパーへ卸し始めたことやメディアに取り上げられたことを機に、サラダパンは全国へと広がっていきました。そして、サラダパンになじんだ滋賀県の人々も手土産として購入するようになり、製造数が増加したのだそうです。 「今ではお寺へのお供えとして使ってもらうことも多く、考案した祖母(智恵子さん)は『販売当初では考えられないことだ』と言っております(笑)」(西村さん) 一時期は、県内の給食メニューにも採用されていたというサラダパン。現在でも、小学校でサラダパンを食べる機会があったり高校の購買部で販売されていたりと、滋賀県民の生活に根付いたソウルフードなのです。 (取材・文=つちだ四郎)
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