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劇場版『Fate/stay night』早くもチケット争奪戦が始まる なぜ圧倒的人気を獲得?

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リアルサウンド

 8月15日に『Fate/stay night [Heaven's Feel] III.spring song』が公開される。元々はヒロインの間桐桜の名前やイメージに合わせて、満開の桜が咲き誇る3月28日の公開を予定しており、偶然にも重要な登場人物であるイリヤスフィール・フォン・アインツベルンを象徴する雪も降るなど、天候にも恵まれていたのだが、新型コロナウイルスの感染拡大による公開延期が決定していた。それでもファンはずっと待ち望んでいた作品とあり、公開前から予約で満席となる劇場もあり、熱量を感じさせる。今回は『Fate』がそこまで注目を集める理由を紐解きながら、映画の見どころに迫っていきたい。  『Fate』シリーズは武内崇や奈須きのこを中心とするゲームメーカーのTYPE-MOONから大人向けPCゲームとして2004年に発売された。2000年頃は同人作品から商業へと転向しヒットする作品も多く、この時代のオタクカルチャーを語る上では欠かせないシリーズとなっている。現在では多くの派生した漫画、アニメ作品を生み出しているほか、スマートフォンアプリゲームである『Fate/Grand Order』が国内モバイルゲーム売り上げランキングの上位の常連になるなど、もはやシリーズとしての人気を超え、1つのジャンルとなっているといっても過言ではない。  その魅力としては以下の点をあげたい。 1.歴史上の登場人物を召喚する。 2.過酷なバトルロイヤル。 3.剣と魔法などが織りなすファンタジー表現と、華麗なアニメ表現。  歴史が好きな人であれば「あの剣豪とあの英雄が戦闘したらどちらが強いのだろうか?」というような想像を抱いたことがあるだろう。Fateでは英霊と呼ばれる歴史上の偉人をサーヴァントとして召喚し、バトルロイヤルを繰り広げるのだが、第1作である『Fate/stay night』はアーサー王などが登場し対決する。そういったIFのストーリーが楽しめると共に、この設定は豊富なキャラクターが生み出しやすいことも重要だ。『Fate』シリーズは番外編も含めてたくさんの派生作品があるが、その肝は実在の人物をモデルとしたサーヴァントの魅力である。キャラクターを1から生み出して人気を獲得するのは難しい部分があるが、下地になる実在の人物がいることでそのエピソードの活用などを行いながらも、史実に引っ張られることなく創作の幅を持たせることができる。  そして過酷なバトルロイヤル描写だ。本作が発売された2004年頃は映画『バトルロワイアル』などが代表されるように、バトルロイヤルを主題とした作品が人気を集めていた。大人向けのPCゲームということもあり、多くの血が流れるほか、暴力表現がいくつも見られた。その中でも正義の味方になるという、青臭い理想を追い求める衛宮士郎の戦いと決断が、多くのファンの心を熱くした。  2004年のゲーム発売、2006年にはスタジオディーン制作によりアニメ化を果たすことで、着実に人気を獲得してきていたが、それが爆発したのは2011年に放送された『Fate/Zero』の影響が大きいだろう。現代社会を舞台をしながらも、剣と魔法が入り乱れるFateの世界をアニメスタジオufotableが美しくも迫力のある映像表現で魅了してくれた。  ufotableは『鬼滅の刃』のアニメ化を担当し、社会現象級のヒットを生み出す起爆剤となった会社といっても過言ではない。アニメ化を果たすことで作品そのもの知名度を上げるだけでなく、確実にブランド力を高めていった結果、『Fate』も高い人気を獲得した。同人からスタートしたゲーム会社の作品が、PCゲーム→複数のアニメ化・番外編の制作→スマホアプリゲーム化といった流れで人気を獲得していくのは、2000年以降のアニメカルチャーの変化や、メディアミックスのあり方を考える上でも重要な出来事だと言えるだろう。  原作の『Fate/stay night』では3つのルートがあり、8月15日に公開される劇場版はその最終章にあたる『Heaven's Feel』編だ。3部作の3作目にあたり、物語はクライマックスを迎える。英雄になることを求めて、色々な犠牲や自身の身を削るような思いをしながらも進んできた衛宮士郎が、最愛の女性である間桐桜といかに向き合っていくのか、といった点が描かれている。ufotableが制作しており、過去作や予告編を観ると、おそらく世界中のアニメ作品を見比べても、比肩するものがないほどの映像表現を披露してくれるのではないかと、公開前から胸が高鳴る思いがする。  『Heaven's Feel』で特に注目したいのが、ヒロインである間桐桜の妖しい魅力だろう。Fateは元々が大人向けPCゲームだったこともあり、セクシーな表現が散見される作品だ。アニメでは男女問わず肌を露出させるような、いわゆるお色気描写というのは多く存在するものの、本作のそれは他を圧倒している。桜の声を務める下屋則子の熱演もあり、単なる萌え表現というには収まらない艶かしさがあるのだ。  だが、これが決して悪趣味なものではないというのも重要だ。そこには艶や色気があり、例えるならば実写映画のベッドシーンのような味わいがある。そこでは絵で描かれたキャラクターではなく、すでに生身の人物としてこの世に生まれているかのようだ。この妖しい魅力こそが、キャラクターを超えて桜の人間性の表現、あるいはその持って生まれてしまった業によって悩む姿を描き出しており、それはまさしく映画的な印象を与える。  世界のアニメーションと比較した場合、日本のアニメはやはり特異な点が多く、ガラパゴス的だと指摘されることも多い。特に本作のようなPCゲームから生まれた作品は、時に眉をひそめられることもある。確かに『Fate』シリーズはエログロに満ちた表現も躊躇なく描いている。一方で、その暴力の裏にある個々の思い、物悲しさ、あるいはエロチックな表現の中にある色艶や思い人に対する複雑な感情も描き出し、アニメ表現の幅を大きく広げてきた。  日本アニメを語る際には、どうしても子どもも楽しめるファミリー向けアニメ映画が注目をされるだろう。本作は子どもが観るには適していない表現も多く、またアニメファン以外にも広く受け入れられる作品とは言いづらいことも事実だ。しかしながら、日本のアニメやオタク文化の光が当たりづらいアングラな魅力を発揮した作品として『Fate/stay night [Heaven's Feel]』の3部作は、1つの金字塔となるだろう。

井中カエル

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