なぜ巨人はSBに歯が立たないのか…丸の走塁事件に見え隠れする“差”とは?
さらに先発の石川には、球速以上の体感を打者に感じさせる秘密があるという。 「楽天のコーチ時代に数値を出したのですが、リリースポイントの位置を示すエクステンションという数値が石川は突出しています。腕が遅れて出てくる独特のフォームに加えて打者に近い位置までボールを持っているため球速以上に速く感じるのです。そしてパワーカーブと呼ばれるカーブも回転数が、NPBで一番多かったのです。巨人にしてみれば見たことのないボールです。攻略に困ったのも当然でしょう」 プレートとボールをリリースするまでの距離を「エクステンション」と呼び、メジャーでは、いわゆる「球持ちがいい」、「悪い」の判断基準にしている。石川は5回にウィーラーに2ランを打たれたが、パワーカーブを武器に7つの三振を奪い、わずか4安打と巨人打線を手玉に取った。最多勝&最高勝率の2冠の力を見せつけた。 一方の巨人の先発、今村はスタートから立ち往生した。一死一塁から柳田へ変化球攻めの末、カウントを悪くして、ど真ん中へ失投。センターオーバーの先制タイムリー二塁打を浴び、さらに続くグラシアルのセンターに抜けそうな打球を吉川が飛びついて止めたが、一塁への送球が逸れて2人目が生還。この日、4安打の栗原に一、二塁間を破られ3失点である。これもまた橋上氏は、ソフトバンク打線の「圧」だという。 「150キロが当たり前のパワー投手がゴロゴロいるパ・リーグでは、振る力がなければ通用しません。必然、打撃練習でも振り、スイング力がつき、追いこまれるまでどんどん強打します。9番打者の甲斐のホームランが、その典型でしょう。いわゆる強打者が育つのです。その圧に負けて今村も、ストライクゾーンの端っこで逃げる、カウント負けして失投する、という悪循環にはまりました。一方、セ・リーグの投手はコントロール主体で、ボールの出入りを主に勝負するタイプが多いので、打者もその対応を求められます。強打者ではなく好打者が結果を出すようになります。巨人の打者は、坂本、丸にしても好打者です。セ、パの実力差というより、その野球観の違いの差が日本シリーズで出ているのではないしょうか」 「強打者と好打者の差」とは言い得て妙である。 2回には甲斐が一発。シリーズでの9番打者の本塁打は67ぶりの快挙となった。3回にはグラシアルが2番手の戸郷から2ランを放ち、7回にはデスパイネが逆方向へ満塁弾。パワーで圧倒した。