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異例のロングランヒット、中国アニメ『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』の舞台裏に迫る

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ITmedia ビジネスオンライン

 『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』というタイトルのアニメ映画が、東京都内のミニシアターで、2019年9月から劇場を替えつつロングランとなっていた。最初の公開から半年以上が経過して、新型コロナウイルスによる映画館の営業が自粛された20年4月初頭まで、劇場によっては上映1週間前に予約で満席になっていたという、異例の事態が続いていた。 【画像】『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』予告編  また首都圏だけでなく、大阪、名古屋、札幌など日本各地のミニシアターでも順次上映されており、日本での総観客数はすでに3万人を超えている。5月14日に39県で緊急事態宣言が解除され、映画館の営業が再開されてからは、『羅小黒戦記』の上映を新たに開始する劇場も増えていて、総観客数はさらに伸びそうな勢いだ。  スタジオジブリ作品や新海誠監督の『君の名は。』『天気の子』のように、国民的ヒットとなったアニメ映画だけでなく、一定数のファンを獲得したアニメ映画がロングランを続ける例は、最近ではそれほど珍しいわけではない。だが、この『羅小黒戦記』が興味深いのは、原作コミックからアニメーションの制作まで、全て中国で生み出された中国映画という点だ。  『羅小黒戦記』は、猫の妖精である小黒(シャオヘイ)が、棲(す)んでいた森を追われて人間の街に逃れるところから始まる。人間の少年の姿に変身できる小黒はそこで、自分と同じく人間に姿を変えて暮らしている妖精たちと出会う。やがて小黒は、妖精と人間は共存するべきなのか、それとも妖精は人間に戦いを挑むべきなのかという争いに巻き込まれていく。  『羅小黒戦記』はネット配信の短編アニメとして11年から制作が開始されて、この劇場版はWeb版の前日譚にあたるが、あくまで独立した物語として楽しめる。ストーリーやキャラクターから受ける印象は、ジブリ作品のようにほのぼのとしたファミリー向けの雰囲気だ。しかし実際にはそうした面だけでなく、スピーディーなアクションによるバトルシーンなども盛り込まれていて、エンターテインメントとしてハイレベルな作りになっている。  海外のアニメと言えば、どちらも19年にシリーズ作が公開された『アナと雪の女王』や『トイ・ストーリー』のように、ディズニーやピクサーのアニメ映画を思い浮かべる人もいるだろう。だがディズニー以外の海外製アニメ、なかでも中国製のアニメ映画が、日本の映画館でこのようなロングランヒットになった例は、これまでにあまり聞いたことがない。  中国のアニメーションは1940年代から60年代には隆盛を誇っていたものの、その後は産業としての存在感が失われて、日本や欧米で制作されるアニメの下請けを行うイメージが強くなっていた。しかし10年代に入ってから、中国の経済成長によるエンターテインメント市場の活性化とともにアニメ産業も勢いを増して、中国国内で爆発的ヒットが生まれるようになってきた。なかでも19年には、3DCGアニメ『ナタ~魔童降臨~(哪吒之魔童降世)』が50億元(約770億円)もの興行収入を記録して、中国映画市場で初めてアニメが年間ナンバーワンヒットの座についている。  その一方で、中国企業が日本にアニメ制作会社を設立したり、日本のアニメ作品に資本参加したりといった具合に、中国は今、日本のアニメ業界にも急速に接近している。「クールジャパン」「日本を代表する文化産業」ともてはやされるアニメビジネスの世界で今、何が起きているのだろうか。  ここでは『羅小黒戦記』がロングランヒットを続けている要因について、前編で本作の日本配給を手掛けた白金氏、中編ではアニメーション監督で本作の制作スタッフとも交流のある入江泰浩氏、後編でアニメビジネスに詳しいジャーナリストの数土直志氏に話を聞いた。『羅小黒戦記』を通じて、アニメ業界で生まれつつある日本と中国との新しい関係を考えてみたい。  なお、この取材は日本で新型コロナウイルスが流行する以前の20年2月に実施されていて、現在の状況を必ずしも反映していない部分がある点をご了承いただきたい。

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