なぜトヨタは姉妹車「ノアヴォク」を両方存続させた? 新型では「ノア」を多く売りたい事情とは
姉妹車「ノアヴォク」が同時にフルモデルチェンジ
以前のトヨタは、トヨタ店やネッツ店など4つの販売系列に応じて、一部の取り扱い車種を区分していましたが、2020年5月以降は全店が全車を扱う体制に移行しました。 【画像】新型「ヴォクシー」はギラギラ系! 存在感ありすぎのデザインを見る!(28枚) この背景には、基本部分を共通化した姉妹車を廃止して、開発を合理化することも含まれており、そのためコンパクトトールワゴンの「ルーミー/タンク」の場合、「ルーミー」のみが継続された「タンク」は廃止。タンクのデザインを踏襲したグレードがルーミーに設定されています。
ところが2022年1月13日に発売された新型「ノア/ヴォクシー(ノアヴォク)」を見ると、3車種あった姉妹車のうち「エスクァイア」は廃止されましたが、ノアとヴォクシーは存続しました。 新型ノアは標準仕様とエアロ仕様を用意し、新型ヴォクシーはエアロ仕様のみを設定。エアロ仕様があるという点で新型ノアと新型ヴォクシーは重複していますが、デザインは異なります。 新型ノアのエアロ仕様は分かりやすい典型的なデザインで、新型ヴォクシーは先鋭的なエアロモデルに仕上げました。なお、新型ノアの標準ボディは、シンプルで親しみやすい外観に造り込んでいます。 新型ノアヴォクで計3種類の仕様を用意した理由を開発者に尋ねると「お客さまの価値観が多様化していることもあり、3種類から選べるように配慮した」という回答でした。 この背景にはノアヴォクの売れ行きもあります。 2021年は新型コロナ禍の影響や、フルモデルチェンジを控えていたことから販売がもっとも落ち込む時期でしたが、ノア/ヴォクシー/エスクァイアの登録台数を合計すると1か月平均で1万台を超えました。これは「カローラシリーズ」を上まわり、ルーミーに迫る売れ行きでした。 しかもノアヴォクの売れ筋価格帯は300万円から380万円とルーミーの2倍近くに設定。ノアヴォクはトヨタの重要な稼ぎ頭ということで、姉妹車を両方存続させる異例のフルモデルチェンジをおこなったのです。 新型ノアヴォクの発表時点で公表された1か月当たりの販売基準台数は、新型ノアが8100台、新型ヴォクシーが5400台で、両車を合計すると1万3500台になります。 フルモデルチェンジの直前でも1万台以上を販売していたから、この販売基準台数は手堅い数字といえるでしょう この台数で注目されるのがノアとヴォクシーの比率で、ノアは60%、ヴォクシーは40%になります。 前述のように、新型ノアは標準仕様とエアロ仕様、新型ヴォクシーはエアロ仕様のみなのでこの比率は納得できますが、実際の販売比率とは食い違います。 新型ノアヴォクは、2022年1月初旬時点で3万1500台を受注していますが、この内訳は新型ノアが40%で新型ヴォクシーが60%だといいます。 先代型の2021年における売れ行きも、エスクァイアを除くと、ヴォクシーが60%でノアが40%の比率でした。 先代ヴォクシーはモデル末期に標準仕様を廃止しているのですが、ヴォクシーの売れ行きはエアロ仕様に絞られても下がらず、前述の通りノアよりも好調に売れています。 そのため、ルーミーと同様に新型へのフルモデルチェンジでノアだけに統合されると思われましたが、販売好調なヴォクシーも残したというわけです。