コロナ禍を都市政策の歴史的な転換点に vol.3
コロナ禍を都市政策の歴史的な転換点に vol.3 野澤 千絵(明治大学 政治経済学部 教授) 2020年、パンデミックとなった新型コロナウイルスは、それまでの社会のあり方を問い直すようなきっかけになりました。そのひとつが、まちづくりや都市政策の問題です。しかし、人口減少が急激に進んでいる日本では、実は、コロナ禍がなくても、それは喫緊の課題なのです。 ◇住まい終活がまちを変える これ以上、空き家を増やさないようにするために、そして、空き家をまちの多機能化に資する活用を進めていくためにも、これからは「住まいの終活」が必要不可欠となります。 要するに、住まいにも終活が必要な時代になっていることを、誰もが認識することが重要です。 「住まいの終活」とは、相続が発生する前から、遅くとも空き家の初期段階までの間に、住まいの所有者や相続人となる家族等が、住まいを、円滑に責任ある所有者・利用者へ引き継ぐための選択肢を検討したり、そのための前提条件の整理や必要な情報の共有をしておくといった一連の活動のことです。 確かに、相続した家には思い出や愛着もあるし、ご両親の思いも残っているようで、すぐに売ったり貸したりすることはしづらいかもしれません。 しかし、空き家問題は、時間が経てば経つほど、解決に手間・時間・コストが増すといった特性を持っています。 家を持っている全ての人が、「住まいの終活」をすることで、将来、家を相続する家族が、売却等の際に助かるだけでなく、地域にとっても、空き家の発生予防、空き家の活用を通じたまちの多機能化につながり、それがひいては、まちの世代交代を促すことになります。 最近は、各地の自治体で、「空き家バンク」という相談窓口を設置するところが増えています。そこでは、地域の宅建業者や司法書士、弁護士などと連携していて、ワンストップで相談に応じてくれるところもでてきました。 家族だけではどのようなところに相談してよいかわからないときは、そうした窓口で相談してみるのも良いでしょう。 いま、私たちが空き家問題に悩んでいるのは、私たちの前の世代が住まいの終活を怠ってきたからです。私たちも同じように怠ると、問題をどんどん大きくし、次の世代に押しつけることになります。私たちから是非、流れを変えていきましょう。 日本は、世界的なパンデミックという未曾有の事態だけでなく、世界に類を見ないスピードで進む高齢化、災害の多発化・激甚化など、極度の不確実性の中にある中で、コロナ禍は、人がより豊かに暮らせるまちのあり方を考えるきっかけにもなりました。 今回の未曾有の事態をきっかけに、誰もが暮らしやすい持続可能なまちへとつくり変えていく都市政策として歴史的な転換点にしていくことが、この時代に生きることになった私たちの使命と言えるのではないでしょうか。 ※取材日:2020年7月
野澤 千絵(明治大学 政治経済学部 教授)