“熊本~東京1300km” 電気自動車でも快適に移動できる「裏ワザ」とは? 新型「タイカン クロスツーリスモ」で体感! ポルシェらしい走りと遊び心に触れる旅
乗船当日のスケジュールは、18時45分に別府を発ち、翌朝6時35分に大阪着というもの。筆者が乗船したのは2023年4月就航の「さんふらわあ むらさき」でしたが、吹き抜けのアトリウムやホテルに匹敵する設備を備えたモダンなインテリアは実に快適。阿蘇のドライブで程よく疲れた体を大浴場でいやしつつ、心地いい眠りに就くことができました。 そして気づけば朝5時を過ぎ、「さんふらわあ むらさき」はゆったりと大阪湾を進んでいきます。そそくさと身支度を整え、「タイカン クロスツーリスモ」とともに大阪南港へと上陸しますが、約10時間の充電により充電状態は87%まで回復。走行可能距離も476kmと表示されています。 大阪南港から横浜青葉インターチェンジ近くにあるポルシェセンターまでは約480kmの行程。ていねいに走ればなんとかたどりつけそうな気もしますが、周辺にはポルシェジャパンの正規ディーラーやPCAの150kW充電器も多くあるため、まずは、あべのハルカス・大阪マリオット都ホテル駐車場内のポルシェ ターボチャージング ステーションでバッテリーチャージしてから出発することにします。
その後は、第二京阪道路、新名神高速、伊勢湾岸自動車道を経て、東名高速へと進むルートで一路、神奈川・横浜を目指します。 ナビによると距離は約480kmとのことですが、充電状態は100%、走行可能距離は544kmを示しています。高速道路も午前中とあって混雑もなく、クルーズコントロールを使用してひたひたと進みますが、乗り心地は快適至極です。 ●「クロスツーリスモ」らしい懐の深さを感じさせる走り味 「タイカン クロスツーリスモ」はダイヤル式のセレクターで「ノーマル」、「スポーツ」、「スポーツプラス」のほか、航続距離を優先する「レンジモード」、ちょっとした荒地向けに車高も上がる「グラベルモード」と走行モードが選べます。 阿蘇の山中では「スポーツ」や「スポーツプラス」も選びましたが、スピードレンジの低い日本のワインディングでは余りあるパワーは刺激的過ぎるほど。 舞台を高速道路に移しても、一定の速度で走るなら「ノーマル」、「レンジ」モードが適していると感じました。何しろ、追い越しが必要なシーンでは、「レンジ」モードですら少々強めに右足に力をこめれば「スポーツカーもかくや!」という加速を披露しますし、「ノーマル」や「レンジ」のスムーズで伸びやかな走りは、シーンを選ばない「クロスツーリスモ」らしい懐の深さを感じさせてくれます。 ちなみに「グラベル」モードを選べば、エアサスペンションにより最低地上高が30mmアップ(その場合の最低地上高は176mm)しますから、段差の大きな駐車場への出入りや未舗装道路の轍(わだち)をパスすることも容易です。 こうして午後早くには静岡県に到達。静岡サービスエリアを過ぎる頃にはバッテリー残量42%、横浜到着時の残量予想は14%と表示されていました。そのまま大きな渋滞もなく、御殿場付近では到着時残量予想が16%まで回復します。 ちなみに、横浜青葉インターチェンジを出た時点でのバッテリー残量は17%、走行可能距離も70km以上という表示でしたから、車載コンピュータによる残量表示はかなり正確だといえるでしょう。 その後、横浜青葉インターチェンジ近くにあるポルシェセンター横浜青葉のターボチャージャーで約30分間充電。バッテリー容量が80%ほどに回復したところで、最終目的地である東京・虎ノ門を目指したのでした。 * * * 今回のドライブ旅では、「タイカン クロスツーリスモ」の高速クルーザーぶりと、スポーティさを存分に堪能することができました。 何よりポルシェらしさを感じられたのは、そのオールマイティな性格でしょうか。長距離を一気に駆け抜けたい、ドライバーや同乗者の快適性も欠かせない、ワインディングではスポーティな走りを楽しみたい……となれば、選択肢は思いのほか多くありません。 しかもそこへ、実用性や趣味性といった評価軸を加えると、BEVか否かを問わず、対象となるモデルは限られます。 「タイカン クロスツーリスモ」は、そんな多様なニーズに応えてくれる上に、愛好家を納得させる魅力に満ちた1台です。しかも、細部に散りばめられたポルシェらしいディテールに、思わずニヤリとするご同輩も多いのではないでしょうか。
村田尚之