宇垣美里が語る、髙石あかりと伊澤彩織の揺るぎないバディ感に萌える「ベイビーわるきゅーれ」シリーズ<宇垣美里のときめくシネマ>
アナウンサー・俳優として活躍中の宇垣美里さん。映画・マンガなどさまざまなサブカルチャーをこよなく愛する彼女が、映画について語るこの連載。今回は、すご腕の殺し屋である女子高校生コンビの活躍を、ユーモア&アクション満載で描いた「ベイビーわるきゅーれ」(12月17日(火)12:00~WOWOWプライム)と「ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー」(12月17日(火)13:40~WOWOWプライム)の見どころをたっぷりと解説! 【写真を見る】相変わらずだめだめなちさととまひろは衝突し合いながらも力を合わせていく ■ダメダメな2人のゆる~い日常とキレッキレの格闘アクションのギャップが癖になる 早いもので、もう来秋の朝の連続テレビ小説、通称"朝ドラ"の主役が発表された。113作目となる『ばけばけ』は、明治時代の作家、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻である小泉節をモデルにしたドラマ。この作品のヒロインに髙石あかりさんが選ばれた。 ニュース速報を見て、心沸き立ち思わずやった~と声をあげた方がいたら、あなたは私の同志です。あの髙石あかりちゃんが!朝ドラのヒロインに!!注目を集める朝ドラのヒロインに選ばれたということは、次世代の国民的女優として見込まれたということと同義。まだ髙石あかりさんをよく知らない、という方がいらっしゃったら朗報です。そんなあなたにオススメの映画シリーズがあります。 髙石あかりの出世作であり代表作と言えるのが『ベイビーわるきゅーれ』シリーズだ。 殺し屋協会に所属する女子高校生の殺し屋二人組・ちさととまひろ。高校卒業を機に2人暮らしを始め、社会に馴染むためにアルバイトなどをして表の顔を持つように組織から言われたものの、何せこれまで仕事といえば殺ししかやってこなかった二人、日常の生活力の低さや社会に馴染むことの難しさから失敗続き。コミュニケーション能力の低いまひろは、そつなく人と仲良くなれるちさとが軽々とバイトを決めることに嫉妬し、2人の仲は徐々に険悪になっていく。そんななか、ひょんなことからちさとがヤクザから恨みをかってしまい、面倒に巻き込まれることになる。 どこまでもマイペースな女子高生殺し屋によるほのぼの?とした日常を描く本作。オフビートな会話にくすくす笑える一方、いくらなんでも人の死が軽すぎる...!と思わず口が開いてしまうほどさくさくと人が死ぬ。毒気たっぷりなダークユーモアな空気感が持ち味だ。髙石あかり演じるちさとが覚悟を決めた迫力ある表情で銃をぶっぱなしたと思ったら、掃除担当の業者にネチネチと怒られ、いかにも納得いかないぶーたれた顔をしているところが可愛らしい。愛嬌たっぷりながらどこかけだるくアンニュイな雰囲気も魅力的。 まひろ演じるハリウッドでも活躍している現役スタントマン・伊澤彩織さんのキレッキレなアクションも圧巻。女性が体格では敵わない男性と戦う時からこそ、スピード感や技のキレ、手数の多さで敵を圧倒するそのリアリティといったら。 2人のバディ感も見どころのひとつ。小さな喧嘩を重ねつつも、ちゃんとごめんなさいが言えて、よくできました、とその謝罪を受け入れることのできる関係性がたまらない。ダメダメな2人のゆる~い日常とハリウッドにも引けを取らないキレッキレの格闘アクションの凄まじいギャップが癖になる。 女性殺し屋、というとどうしてもどこかセクシーだったり、"女子高生"という記号がそのままに消費されるような不必要なエロとしての描かれ方がしそうなものだけれど、この作品ではそういった搾取は一切ない。あくまでだめだめな人間のもつひとつのカテゴリーとしての女子高生という記号が効果的に使われていて、そこもこの作品をおすすめできるポイントのひとつだ。 ■古着を中心としたセンスが良いコーディネートもかわいくって思わず真似したくなる 続く『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』でもその魅力は健在。 殺し屋として仕事を重ねそれなりに給料をもらっているはずなのに、手続き関係がとにかく苦手な2人は何かと金欠。一方、殺し屋協会でアルバイトしている兄弟・ゆうりとまことも収入面で不安を抱えて生活していたところ、ちさととまひろという正社員を殺せば、その空いたポストが手に入ると聞きつける。生きていくため、ゆうりとまことはちさととまひろの元への襲撃を決意する。 ジムの会費を何年も滞納し莫大な請求を受けてしまったり、保険料を払うために銀行へ急いだり、お金の管理の仕方でちょこまか喧嘩をしたり。相変わらずだめだめな2人に分かる、分かるよ......と感情移入しながら見てしまった。もう税金とかなんとか、勝手に誰かが払ってくれよ!ダメさのリアリティに身に覚えがありすぎる。 着ぐるみでのガチ喧嘩はもちろんのこと、2人の何気ないやり取りを支えるのがちさと演じる髙石あかりさんの存在感。あの表情でぐっと惹きつける感じ、なんだかんだまひろを手なずけている様子、たまりません。前作より日常パートが大目に描かれ、その分2人のファッションもたっぷり楽しむことができる。古着を中心としたセンス良く2人らしいコーディネートがかわいくって思わず真似したくなった。 もうひとつの主人公バディであり今回の敵であるゆうりとまことの兄弟は、まさにちさととまひろの合わせ鏡のようなバディ。2人の日常や関係性、人柄もしっかりと描かれ、その憎めなさにどうしたって感情移入してしまう。もちろん、兄弟の服装もとってもオシャレ! 同じように道ならぬ世界に生き、それでも日々一生懸命に生きている彼女たちと彼らがもっと違う出合い方をしていたら、と思わずにはいられない。それでもちさととまひろ、そしてゆうりとまことにもこの道で生きる矜持があり、その諦念のようなスタイルが物語をウェットにさせすぎない。タイマンバトルの迫力はさることながら、そのやり取りは命の奪い合いの癖にどこか爽やかで、部活を彷彿とさせるような青春の輝きすら感じさせるものだった。見た後は定食屋に駆け込みたくなること、間違いなし。 シリーズを追うごとにちさとのアクションシーンが増え、確実に成長していっていることが目に見えて分かるところも愛おしい。まひろとの共闘シーンも増え、二人の揺るぎなきバディ感にも萌えた。アクション作品としても邦画ベスト級であり、この先の国民的女優の初々しい演技も楽しめる、まさに必見のシリーズだ。朝ドラの予習に、ぜひご覧ください。日ごろの鬱憤をちさととまひろがぶっ飛ばしてくれるよ。 文=宇垣美里 宇垣美里●1991年生まれ 兵庫県出身。2019年3月にTBSを退社し、現在はドラマやラジオ、雑誌、舞台出演のほか執筆活動も行うなど幅広く活躍している。 TBSラジオ『アフター6ジャンクション2』月曜パートナーを担当中。
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