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怪談とエロと情念の関係|ヘイケイ日記~女たちのカウントダウン

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幻冬舎plus

花房観音 8月の頭に、道後温泉に行った。 四国に唯一残る、ニュー道後ミュージックというストリップ劇場で、毎年恒例になっている「怪談ストリップ」を見るためだ。  怪談ストリップ?? なんじゃそりゃ?? と、いう人もいるだろう。「怪談ストリップ」は、踊り子たちが怪談要素の強い演目で舞台に立ち、他にも怪談を語る人たちや、紙芝居なども行われる怪談の総合エンターティメントイベントだ。 見に行くのは二度目だが、怪談とストリップは非常に相性がいいと思っている。「四谷怪談」「番町皿屋敷」「牡丹灯籠」などの有名な怪談話には、情念があるから、怖い。「情念」をはらんだエロと怪談の融合に惹かれないわけがない。 そして今回は、私がストリップを見るきっかけになった、踊り子・若林美保さんが初の怪談ストリップに挑戦ということで、絶対に見たかった。

怪談と情念の相性

ホテルにチェックインして、シャワーを浴びて、開始時間の4時27分(死にな)に合わせて場内に入る。場内の雰囲気もおどろおどろしくて、いい。 若林さんの出番は、3番目だった。 薄い襦袢を羽織った彼女が登場し、その手には(もちろん作り物だが)しゃれこうべがあった。音楽に合わせ、彼女は笑みを浮かべながら、しゃれこうべを愛でる。 「花葬」という名の演目だ。 しゃれこうべは、彼女の恋人だった人なのだろうか。 愛おしげに、嬉しげに、彼女は物言わぬ頭蓋骨をひたすらいとおしんでいる。

未練と執念が生んだもの

私は舞台を見ながら、ここ数年、周りで亡くなった人たちのことを考えていた。 思い浮かぶのは、皆に見守られ大往生した人ではなく、この世に絶望して不慮の死を遂げた人たちのことだ。 生き残った人間たちを悔いさせ、悲しみと痛みで心を引き裂き、さよならを告げる暇もなく、遠くにいってしまった人たちの顔が浮かんだ。 若林さんが抱くしゃれこうべが、葬儀の日に棺桶の中で見た死に顔と重なった。静かで、安らかな顔だった。この世の苦しみを捨てることができて、楽になっているのだろうと思うと、なんだか悔しくもあった。残された人間は、涙を流し、何かできることがあったんじゃないかと自分を責め、魂の一部をもぎ取られた痛みを抱えながら生き続けないといけないのに。 幽霊というのは、亡者ではなく、生きている者が生み出した未練と執着がもたらすものだ。 しゃれこうべと遊ぶ若林さんを見て、改めてそのことを考えると、ずっと涙が止まらなかった。

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