生木の「クリスマスツリー」はサステナブルか否か
クリスマスをはじめとするホリデーシーズンの到来だ。ツリーを家に飾る人も多いが、日本ではプラスチック製が主流だ。一方、米国や欧州では、生木を使うことが珍しくなく、山や森に出かけて行って木を選び、自ら切って購入する人たちも多い。木を切ることはサステナブルなのだろうか。実は、生木のクリスマスツリーは伝統を繋ぎ、環境を守り、暮らしを支える産業なのだ。コロナ禍で米国のクリスマスツリー市場にも変化が見られている。(米ポートランド=山中 緑)
米国では11月末の感謝祭が終わると、街は一気にホリデームードだ。家族でツリーや家の中を飾り、その日を迎える準備をする。生木のツリーなら、空間は1カ月ほど清々しい森の香りに包まれる。 届いたプレゼントはツリーの下に並べる。子どもたちは胸の高鳴りを抑えつつ、指折り数えて当日を待つ。クリスチャンなら、教会のクリスマス礼拝に参加する。当日はご馳走だ。家族や大切な人たちと、感謝とともに分かち合う。それが米国の伝統的ホリデーだ。 ホリデーに欠かせないツリーやリースは、スーパーやホームセンターはもちろん、空き地や駐車場を利用した特設販売所に並ぶ。米国のクリスマスツリー市場は、年間20億ドル(約2100億円、the Houstle調べ)に上る。 生木のツリーは、米国内の樹木農場がその98%を生産する。農場では常時約3億5000万本のツリーを栽培、毎年約3000万本をツリーとして出荷する。地域によっては農場を訪れ、自分で選んだ木を自ら切って購入する人も多い。使用済みの木は自治体ごとに回収される。
数カ月使うために木を切る生木のツリーだが、プラスチック製よりも環境負荷は圧倒的に少ない。米国のプラ製ツリーの85%以上が中国製だ。そのほとんどが、多くの環境団体が使用のボイコットを訴えるポリ塩化ビニル(PVC)を使用している。生産過程ではもちろん、輸送にも二酸化炭素が発生する。「(プラ製ツリーは)何度も使える」とエコを主張する関係者もいるが、全米クリスマス協会によると、プラ製ツリーの平均的使用期間は6年~9年だ。その後、半永久的にゴミとして地中に残ることを考えれば、重すぎる環境負荷である。 生木のツリーは野菜や果樹同様、農産品だ。樹木農場では、ツリーの出荷までに約8年~10年を費やす。その間、樹木は二酸化炭素を吸収し、酸素を排出する。その育成は水と土壌を守り、複雑なエコシステムを支える役割を担う。さらに使用後は、大きなエネルギーを用いることなくリサイクルできる資源でもある。そして、最後は土に還る。