落合陽一×井口皓太(映像デザイナー)「2021年はARの波が来る?」【後編】
画像やロゴに短いアニメーションを加えることで、映像のデザインに"変身"させる――映像デザイナー・クリエイティブディレクターの井口皓太(いぐち・こうた)は、その「モーショングラフィックス」と呼ばれる分野を主軸に活動している。 【画像】動くスポーツピクトグラムの制作過程 最近の代表作といえば、1年の延期を経て2021年に開催予定の夏季五輪、東京2020大会に使われる「動くスポーツピクトグラム」だろう。言語に頼らず競技種目をイラストレーションで表現するスポーツピクトグラムには東京1964大会以来の歴史があるが、井口はそこに史上初めて「動き」を与えた。 そのスポーツピクトグラムの制作秘話をたっぷりと語った前編記事に続き、後編では井口と落合陽一(おちあい・よういち)が、激変する「映像」という創造分野の未来像について語り合う。 * * * 落合 先日、アニメ制作会社の方と話す機会があったんですが、いわゆるセル画からはじまる"ジャパニメーション"の映像をつくっている若手のアニメーターの方は、給料がかなり低いことが多いのが現状だそうです。 一方、3DCGとかモーショングラフィックスで、なおかつ広告会社の制作を請け負っているような方々は、それよりは高賃金の給与体系で働いていると。古典的なアニメーションをつくっている人たちの環境を改善する方法はないかとずっと考えているんですが、何か思いつきますか? 井口 最近、企業のロゴのモーショングラフィックスを頼まれたときは、「これは手書きアニメーションのほうがいいと思います」とこちらの考えをお伝えしました。温度感として、やっぱりアニメーションを描く人って技術がすごいですから。 ただ、そのまま任せてしまうとデザインという分野から離れてしまうので、僕がまずモーショングラフィックスでガイドをつくった上で描いてもらうとか、今後はそういうことが増えていくんじゃないでしょうか。もちろん、アニメーターさんがそれをやりたがるかどうかはまた別問題ですが。 落合 そうですよね。一匹狼で、とにかくいいシーンをつくるんだ!というモチベーションでやっていらっしゃる方も多いでしょうから。技術と意地と根性の世界です。 井口 本当に、尊敬しかないです。 落合 この講義には毎年、広告分野の方をお招きしているのですが、聴講している学生さん側を取り巻く雰囲気はずいぶん変わってきたように感じます。 僕たちが学生の頃は、面白いことをやり続けるクリエイティブディレクターはやっぱり広告代理店を経て独立した人が多かった。例えば佐藤可士和(かしわ)さんとか。それが王道なのかなと思っていました。 井口 そうですね。 落合 でも今は、代理店に行くよりベンチャーやIT系でクリエイティブをやったほうが面白そう、みたいな学生さんが増えています。これはある意味、生き方が多様化したことで"王道"が見出せなくなっているのかなとも思うんですが、何かアドバイスはありますか? 井口さんがTYMOTEを立ち上げたように、自分でつくって勝負してみろ、というところでしょうか。