「名簿から消えた」ビッグモーターを支配した「ロイヤルファミリー」の再就職先と前副社長の仰天計画
兼重宏一前副社長(35)と側近2名によって形成されていた「ロイヤルファミリー」。5~6年前から彼らによって繰り広げられてきた「恐怖政治」によってパワハラや降格人事が頻繫に発生し、保険金不正請求をはじめとする数々の不正行為が増えていった。それに比例するように売り上げは‘17年の1738億円から’22年には5200億円と、この6年で約3倍にも急増している。 【独占入手】腕を組み、仏頂面で…前副社長・宏一氏による恐怖の「環境整備点検」現場写真 7月25日に兼重宏行前社長(71)と宏一副前社長の退任が発表され、和泉伸二新社長(54)、石橋光国新副社長(45)を軸とする新体制がスタートした。そこで注目されていたのがロイヤルファミリーのメンバーであるA常務とB本部長の両名の去就だ。兼重親子がビッグモーターの経営から完全に手を引いたとしてもこの両名が会社に残るようでは、抜本的な改革はできないとされていたからだ。 そんな両名に関して、新たな進展があったようだ。複数のビッグモーター関係者によると 「いつの間にか社員名簿から二人の名前が消えていました。すでに経営陣からは外れているようです」 というのだ。 一体内部で何が起きているのか――。元幹部社員は「あくまで噂レベルですが……」と前置きした上で、その実情を明かした。 「A常務とB本部長の両名は和泉新社長に『辞表』を提出したそうです。ですが、和泉氏はそれらを受け取らなかった。『会社を辞めていま逃げることは許さない』とハネつけたそうです。ビッグモーター崩壊の戦犯ともされる両名の“逃げ得”を阻止したんです。男気がある和泉氏らしいですね」 逃げ切りを許されなかった二人は新たな職場を用意されたようだ。別の関係者が続ける。 「現在、会社ではコーティング業務を行う新会社の設立計画が進んでいます。二人はそこで新たな任務をこなすとみられます」 「コーティング」とは車両の外観を美しく保つための施工で、別名「ガラスコーティング」とも言われる。昨今、タイヤコーティング、窓ガラスコーティングなどと共に新車ディーラーなどでも盛んに勧められる。自動車販売時のオプションとして大きな収益となっている施工である。かつてビッグモーターでは、このコーティングが見積もりから外せない必須オプションに入っていた。約10万円と高額である一方、実際はコーティング施工をしていない事例も頻発したため、クレームが後を絶たなかった。現在は見積書の必須オプションから外されている。 今回、ロイヤルファミリーの二人はその担当者に任命されたとみられるが、さらに驚きの情報が入ってきた。 「設立のために前副社長の宏一氏がお金を出したようですよ。宏一氏は早稲田大学時代の友人を頼って外資獲得のために海外で画策していたという噂もあります。ビッグモーター崩壊の責任をとるつもりなのか、それとも忠誠をつくしてくれた2名の再就職先としておぜん立てしたものなのか。まだ進行中の計画のため、その真意はわかりかねますが……」(同前・別の関係者) ロイヤルファミリーの思惑が蠢く一方で、会社としては依然として厳しい状況が続く。ビッグモーターは今月10日、複数の取引銀行に対し借入金90億円の借り換えを要請したことがわかっている。現在は、各銀行からの返事を待っている状況だ。 「今回の銀行への90億円の借り換えについて、銀行側はかなり厳しい判断を下すでしょう。なぜなら内部留保があるとはいえ、現在、開店休業状態でまともに販売も買い取りも保険事業もできないビッグモーターでは半年ほどで資金が枯渇すると見込まれているからです。先日、契約の半数を占めていた大手信販会社の『ジャックス』がローンの新規契約を中止にしましたが、『オリコ』も契約停止する可能性があり、そうなった場合は更に早まりそうです」(同前) ビッグモーターは来週から在庫車両のうち約1万2000台をオークションに放出し現金確保を行う予定だという。しかし、こちらも代表交代による所有者名義の変更が9月に入ってからと、時間が掛かることを理由に買いたたかれる可能性も大きい。内外に課題は山積しているのである。 取材・文:加藤久美子
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