日本一の瞬間「亡くなった女房が降りてきて…」DeNA初代監督・中畑清が日本シリーズ解説で涙したわけ「こんな景色が見られるときが来たんだと」
桑原は泣きながらバットを持ち上げていた
――桑原選手のことで言うと、1回裏にヘッドスライディングで出塁しました。「ギリギリのプレーが勢いをつける」と解説して、その回こそ点は取れなかったにせよ実際チームに勢いが生まれています。 中畑 大舞台で開き直れるっていうのはアイツの持っている良さだよね。怖いものなんてないっていう精神的な強さ。これって教えられるもんじゃないから。アイツ、自分で演出してんじゃないかっていうくらい、このシリーズを通していいプレーを見せつけてくれたよ。ここで見せつけたら最高だっていうことを分かってる(笑)。円陣を組んでリーダーシップを取って声を掛ける自覚もそうだけど、自分に自信がなかったらできないよ。 ――桑原選手は中畑監督の1年目に入ってきた選手。「泣きながらバットを振っていた、一番振り込んだ選手」とも解説の席で語っています。 中畑 これ以上振れないって言って、上がってこなかったんだ、バットが。持ち上げることができなかった。それを泣きながらね、クワマンは“この野郎、チキショー”ってバットを地面に叩きつけるんだよ。振れないからバットを持ち上げても、落とすことしかできない。 限界を超えたところの練習量を、あの姿を見ていたから、こいつにはいい選手になってもらいたいってずっと思っていた。あの涙にはウソがなかった。練習にウソはなかった。それをクワマン自身がしっかりと証明してくれたよね。 ――教え子と言えばやはり筒香選手。2回裏、ホークスのエース有原航平投手の4球目、チェンジアップを捉えてバックスクリーン右に飛び込む先制ソロを放ちます。「あの方向にホームランが出れば、彼本来のバッティング」と中畑さんも納得の一発でした。 中畑 左バッターが引っ張って右中間という打球は、絵に描いたように美しいんだよね。逆方向におっつけたりするのももちろん彼のテクニックにはあるんだけど、一番かっこいい筒香の姿はあの方向へのホームランなんだよ。あの軌道を見ながらそれを思い出したから、ああいうコメントになった。 アイツは若いときからとにかくうまかった。大人びたバッティングっていうかな。俺は真っ直ぐに滅法強くて変化球にはからきしダメで。そのパターンがまあ普通なんだけど、筒香は逆だったんだよな。だから速いボールに対して振り負けないスイング、タイミングを自分のものにしなきゃいけなかった。始動を早くして“いつでもいらっしゃい”と、相手投手に分からせてやらないと怖さを与えられないぞ、とは伝えていたし、バットマンはどこに何を投げられても全部打ち返せないようじゃないとダメだから。実際、自分のスイング、タイミングを見つけて素晴らしいバットマンになったし、大事な試合で勝ち試合をつくるっていう一番の仕事をしてくれたと思うよ。
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