サッカー監督たちを閉じ込めるピッチの『檻』
それを動物園の「檻」にたとえたら、彼らはどう反応するだろう。無礼者と怒る者もいれば、笑いながら同意する者もいるだろう。どちらが良い・悪いというわけではない。監督たちは、千差万別で、個性豊かで、じつに表情豊かに破線で引かれた小さなテクニカルエリアをうろつきまわってわたしたちを楽しませてくれているのだから。まるで、ほんとうの動物園のように――。 【画像】各スタジアムのさまざまなテクニカルエリア
■まだ新しいテクニカルエリアの歴史
後半アディショナルタイム、タッチライン際でFKが与えられた。FKを得たのは1点ビハインドのホームクラブ。長身のセンターバックたちをゴール前に上がらせ、キッカーがロングパスを送ろうと助走のために下がっていく。だがそこにはビジターチームの監督が立っている。どいてくれと言うと、「自分のテクニカルエリアのどこにいようと、オレの自由だ」と、動こうとしない。さて、レフェリーはどう対処する? 2016年まで英国の『ガーディアン』紙で続いていた「You are the Ref(きみがレフェリー)」という人気コラムにあった設問だ。読者から送られてきたルール上の設問に、人気漫画家のポール・トレビリオン氏が絵をつけ、元有名レフェリーであるキース・ハケット氏が解説をつけるというもので、数十年間続いたという。さすがにサッカーの母国というか、サッカー文化爛熟の地である。読者の設問の「重箱の隅」度も、尋常ではない。 テクニカルエリアは、サッカーピッチ上の数々のラインで最も若い。1993年、Jリーグの誕生の年にルールブックに初めて載った。ただし、当時は、「競技場」について規定されたルール第1条のなかではなく、「主審」についての第5条の「公式決定事項」の(14)に示されている。 「監督は、競技中に戦術的指示を競技者に伝えることができる。しかし、監督およびその他の役員は、テクニカルエリアが設けられている場合には、この中にとどまっていなければならないし、常に責任ある態度で行動しなければならない」