「尖閣奪取」中国に王手をかけられた〈日本人の倫理観や国際常識は中国には通用しない〉/山田吉彦――文藝春秋特選記事【全文公開】
尖閣諸島周辺での中国の動きが活発化しています。今年4月14日に尖閣諸島周辺の接続水域に中国当局の船が侵入。そこから8月2日まで、111日連続で、尖閣諸島周辺の接続水域内で中国公船が確認されました。これは2012年の尖閣諸島の国有化以来、最長の連続日数となります。 1回の領海侵犯で滞留する時間も、どんどん長くなってきています。10月11日には、中国海警局の警備船2隻が尖閣諸島周辺の日本領海内に侵入しました。この警備船は海上保安庁の退去要請を無視し続けた結果、57時間39分にわたって領海内に滞在。さらに今年5月には、中国の軍艦並みの警備船が日本の漁船を追いかけ回すという事件も起こっています。 尖閣諸島とは、石垣島の北に位置する、魚釣島、久場島、大正島など東シナ海上の8つの小島の総称です。第二次世界大戦後、尖閣諸島は沖縄とともにアメリカに占領され、統治されましたが、1972年、沖縄返還協定にもとづき日本に返還されてからは、沖縄県石垣市の行政区に属しています。 その領有権が問題になりはじめたのは1968年、国連アジア極東経済委員会(ECAFE)が東シナ海海底の資源埋蔵状況の調査をおこない、尖閣諸島周辺の海底には埋蔵量豊富な油田が存在する可能性が高いと発表してからです。この発表後、中国や台湾が海底資源の確保を目指し、尖閣諸島の領有権を主張し始めました。そして近年、急激な経済成長とともに海洋進出を目指す中国が、尖閣周辺での挑発を急激にエスカレートさせているのです。 私は海洋学者としてこの問題に携わり、現地に通ってフィールドワークを続けてきました。今、尖閣の海で何が起きているのか。中国の直近の動きを踏まえ、日本がとるべき対策などをお話ししたいと思います。
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山田 吉彦/文藝春秋 2020年12月号