毛利悠子の愛すべき機械が示す「自然の本質」とは?|青野尚子の今週末見るべきアート
東京の美術館では初めてとなる毛利悠子の大型展『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子―ピュシスについて』は、現代美術作家の視点から見た〈アーティゾン美術館〉のコレクションと自作との対話を見せるもの。彼女が読み解く近現代美術のもう一つの側面とは? 【フォトギャラリーを見る】 〈アーティゾン美術館〉では2020年の開館以来、毎年1回「ジャム・セッション」と題したシリーズの展覧会を開催している。現代アーティストが〈アーティゾン美術館〉を運営する石橋財団コレクションの作品からインスピレーションを受け、自作と呼応させた展示を行うというものだ。これまでに山口晃や鴻池朋子らがスリリングなインスタレーションを見せてきた。
「ジャム・セッション」の5回目になる毛利悠子が提示する展覧会タイトルは「ピュシスについて」。「ピュシス」とは「自然」または「本性」と訳される古代ギリシャ語だ。「自然」は、人工的なものを組み合わせた毛利の作品とは対極にあるもののように感じられる。 「私は機械仕掛けの作品を作っているけれど、いつも考えているのは『自然』のことだったな、と思って。たとえば重力とか磁力をセンシングしながら、すでに地球上にあるエネルギーを考えたいと思っていたんです」(毛利)
「ジャム・セッション」に参加した作家たちはコレクションを詳細に見ることによって、それぞれに発見をしている。過去の作品は毛利にもたくさんのことを語っている。 「コレクションから過去のアーティストの活動を見ると、彼らが何にチャレンジしているか、何を見たかったのか、世界を見たかったんだ、ということを感じることがありました。美術館の展示室でコレクションを見るときは額に入って心地よくデザインされている。でも、彼らがチャレンジしているのはもっと過酷なものですよね。それをもう1回、生の人間の手仕事を介して、彼らのチャレンジ精神みたいなものを呼び起こせたらおもしろいな、と思ったんです」