【特集】「写真館は無くならない」思い出つなぎ “110年” 80歳写真師のこだわりとは?【この町で~愛される老舗~|新潟】
五泉市で110年続く老舗写真館『コンドウ写真館』。町の写真館として、七五三など記念の日に家族の思い出の1枚を残してきました。〝ベテラン写真師〟としての経験を生かし、シャッターを切る3代目が幾多の困難を乗り越え、写真館を守り続けてきた思いを語りました。 【動画】【特集】「写真館は無くならない」思い出つなぎ “110年” 80歳写真師のこだわりとは?【この町で~愛される老舗~|新潟】 経験と思いが詰まった撮影の時間。ここは、家族の歴史を写真に残す町の写真館。五泉市村松の『コンドウ写真館』。中に入ると、吹き抜けの階段と表情豊かな写真の数々が目を引きます。 ■コンドウ写真館3代目 近藤三稚さん(80) 「着付け室がそこにあるんですよ。ドレスや着物を着て降りてくるときウキウキして、そしてスタジオに入ると気持ちが乗ってくる。」 3代目の近藤三稚さんは、スタジオカメラの撮影を始めて60年。常に頭にあるのは『被写体がいかに綺麗に写るか』です。 ■コンドウ写真館3代目 近藤三稚さん(80) 「女性は、光にこういうふうにしたほうが綺麗に写る。こっちがシャドーに落ちるでしょ。」 長年の経験を生かした撮影。写真師としてのスイッチは突然入ります。 ■コンドウ写真館3代目 近藤三稚さん(80) 「ちょっと1枚とってみようか。腰掛けて見ますか。左の足正面がいいかな。もう1枚ね!頭ちょっとこっち倒すとかわいいかな。そうそうそう!素敵!ものすごくいい!OK!お疲れ様です!」 コンドウ写真館は、三稚さんの祖父・龍一郎さんが1913年に開業しました。その後、両親が跡を継ぎますが、火事で写真館が全焼。再建に向けて奮闘する姿を見て写真師を志した三稚さん。5年間の修業を経て、1968年に写真館の3代目となります。 6年後には、夫・修牟さんと結婚し、夫婦二人三脚で経営してきました。 しかし… ■コンドウ写真館3代目 近藤三稚さん(80) 「ちょうど20年前の12月22日、帰ってきたら仕事場のところで(修牟さんが)椅子から崩れ落ちてた。」 夫の修牟さんが、脳出血で倒れ入院。後遺症で言語障害と手足に障害が残ったため、写真師としての仕事ができなくなりました。 ■コンドウ写真館3代目 近藤三稚さん(80) 「『修牟さん、病めるとき助け合うのが夫婦なんだよね。何にも心配しなくていいよ、私があとなんとかするからよく養生してね』って言ったら、ポロっと涙を流した。」 それから20年、写真館を守ってきた三稚さん。今年9月にスタジオで1枚の写真を撮ります。 ■コンドウ写真館3代目 近藤三稚さん(80) 「ちょうど結婚50年。金婚だからスタジオで写真が撮りたい。連れてきてくださって、この写真が撮れたんです。」 当時、介護施設に入所していた修牟さんの80歳の誕生日に合わせ、一時的に帰宅し撮影。あまり多くはなかった2人で写る写真。この1枚が夫婦で撮る”最後の1枚”となりました。 ■コンドウ写真館3代目 近藤三稚さん(80) 「この1カ月後、天に召された。悲しむよりも、ありがとうございました。今までこの世にとどめてくださってという感謝の気持ちのほうが余計でね。」 11月中旬、撮影に向けて準備をする姿がありました。 ■コンドウ写真館3代目 近藤三稚さん(80) 「確認ですね。抜けてないように。ハードな面です。お客さまが来られたら、ソフトな面なんでシビアに(確認している)。」 この日は、五泉市に住む大関さん一家が来館。4人兄弟の次女・桃花ちゃんの七五三の記念に写真を撮りに来ました。 ■コンドウ写真館3代目 近藤三稚さん(80) 「桃花ちゃん!すてきよ!学校行って何が楽しいですか?」 ■大関桃花ちゃん 「国語と図工。」 会話をしながら、緊張感を解いていきます。 ■コンドウ写真館3代目 近藤三稚さん(80) 「そのお顔でいい、はいっ!今はそれでいいわ。お澄ましのお顔いいね。かわいい!その表情いい!よしOK!」 様々な手を使って笑顔を引き出していく三稚さん。 ■コンドウ写真館3代目 近藤三稚さん(80) 「ももかちゃん、すごくいいお顔したよ。後で楽しみにしててね。」 ■大関桃花ちゃん 「(Q.緊張した?)楽しかった。」 実は、桃花ちゃんの母・絵梨さんも、子どものころからコンドウ写真館で写真を撮っていました。結婚し、子どもが生まれた今も続けている習慣となり、アルバムのページは増え続けていると言います。 ■桃花ちゃんの母・絵梨さん 「何回でも見返せる。あっという間に大きくなっちゃうから、写真が残っているとうちの歴史というか。いいよね見てるとね。」 お祝い事や何かの記念に写真館で思い出の1枚を残す。その価値を絵梨さんは感じています。 ■桃花ちゃんの母・絵梨さん 「私が結婚した時に、うちの母が(今までの写真を)改めてアルバムにしてプレゼントしてくれたんです。それが本当に思い出すとあれですけど、うれしかったです。残しておいてよかったなと思いました。」 県の写真館協会によりますと、少子化の影響などもあり県内にある写真館は、16年で約30軒減少しています。しかし、三稚さんは世代を越えて思い出を残す写真館だからこそ、無くなることはないと話します。 ■コンドウ写真館3代目 近藤三稚さん(80) 「この文化は無くならないと思います。それはただ撮るだけじゃなくて、ハートですから。思い出が親を思う気持ちになるでしょ?写真館は、努力次第では絶対に繋がる。」 三稚さんには、跡を継ぐ子どもはいません。 自分の代で写真館を閉めることも考えたことはありますが、今は第三者への事業承継も視野に入れています。できる限り、コンドウ写真館を残して家族の思い出をつないでいく。そのために、三稚さんはこれからもシャッターを切り続けます。 ■コンドウ写真館3代目 近藤三稚さん(80) 「体力的に限度があると思いますけど、気持ちの上では愛を与えたい。来られたご家族・お子さんには、いっぱい愛を与えたい。そして、自分のできる限りのいい写真を残してあげたい。その気持ちだけですね。」