「人口の3割超?」愛着障害は平均余命に影響する 概ね1歳半までが愛着形成に重要な時期
■安心感のよりどころとなる存在 愛着形成の核は1歳半までが臨界期とされるが、その時点で安定した愛着が形成されていた場合でも、その後の要因によって、不安定な愛着に変わってしまうことがある。 虐待やネグレクト、心理的な支配とともに、親の精神疾患や離婚、家庭内葛藤なども、子どもの愛着を不安定なものに変えてしまう。それ以外にも、きょうだいからの虐待や学校でのイジメなども深刻な影響を及ぼしうる。 物心がついて以降に起きた出来事は、子どもの心に完全には同化されないまま、トラウマとなって残ることになる。未解決型愛着と呼ばれるタイプは、ある程度、年齢が上がってから起きた出来事(たとえば、親の離婚やイジメ)によって、安全基地が奪われることで愛着のしくみ(「愛着システム」とも呼ばれる)がダメージを受け、回復しないままになった状態だと考えられる。
それに対して、もっと幼いころに起きた養育環境の問題は、子どものなかに同化されてしまい、愛着スタイルとして自分自身の一部として一体化してしまうため、通常はトラウマとして意識されることはない。 成人してからは、恋人やパートナーとの関係が、本人にとって安全基地となるかどうかが、愛着の安定性に影響する。それ以外にも、職場において居場所を失うことや、上司との折り合いの悪さといったことも影響することがある。
■哺乳類として受け継いできた生物学的なしくみ 愛着が安定したものとして機能するためには、「安全基地」と呼ばれる安心感のよりどころとなる存在との関係が重要とされる。その人の所属する集団に、一人でもそうした存在がいれば、愛着システムが、大きなダメージを負うことは免れやすい。 逆に、家庭にも学校や職場にも安全基地となる存在がいない状況に置かれることは、愛着システムの機能不全を引き起こし、心身に支障を生じやすくなる。
愛着というしくみは、本人の安心を守るだけでなく、生命を守る根幹となるしくみと考えられ、それがうまく機能しなくなるとき、人は窮地に陥る。 愛着は、単なる心理学的なしくみではない。それは、生理学的な現象に基づいた生物学的なしくみであり、哺乳類に共通するものである。 哺乳類として受け継いできたこのしくみが危機的状況に陥り、機能不全を起こしているのが、「愛着障害」という状態なのである。それが広まっているということの意味を考えたとき、それは地球環境の破壊と同レベルか、それ以上の深刻な事態が進行していることに気づかされることになる。