横浜から徳島・美波町へ移住決意 コロナ後の働き方模索する女性
新型コロナウイルスの影響で、リモートワークや在宅勤務など、新しい働き方が推奨されている。そんな中、「リモートワークが社会的に押し出されている今こそ、職場環境をガラッと変えられる」と、徳島県美波町への移住を決めた女性に話を聞いた。【岩本桜】 東京都内で発展途上国の生活支援などに取り組むNPO法人で勤務している女性(32)=横浜市金沢区=は、徳島県内の感染状況を見極めながら、今春をめどに町へ移住する予定だ。現在の仕事はリモートで続けながら、移住後は副業を始めるつもりだという。「いろんな場所で仕事をするのが、コロナが落ち着いた後の働き方なのかな」と考える。 移住を検討し始めたのは、昨夏ごろ。新型コロナの影響で海外出張がなくなり、リモートワークが増え、「どこでも仕事ができる」と感じた。休日に仕事を持ち込むなど仕事中心の生活を送ってきたが、「自分が実現したいライフスタイルがかなう場所に行ってもいいのかな」と考えるように。野菜作りや、生ごみを分解して堆肥(たいひ)に変える取り組みなど、身の回りのことは自分で挑戦したいといい、町を紹介してくれた知人を通じて移住情報を集め、11月上旬に町を訪れた。 「ゆっくりした時間が流れている」というのが、町の第一印象だった。古民家を改修したカフェやゲストハウスもあり、「良いものをうまく残している」と感じた。町中を歩くと、初対面の住民から「こんにちは」「その格好で寒いんじゃない?」と話しかけられ、人とのつながりを大切にする町の雰囲気も気に入った。「ここで挑戦してみたい」。徳島県を訪れたのは初めてだったが、町への移住を決意した。 今とは遠い場所での暮らしになるほか、新型コロナの感染が続く中、地域住民に心配をかけないか少し不安も感じている。一方、町を訪れた時、ゲストハウス経営者から言われた「美波町だったらいろいろ挑戦できる」との言葉が心に残っている。女性も町で新たにカフェを始めたいといい、「これまで『こういうことやってみたい』という考えはあったが、どう実行していいか分からないまま置いてきたものがたくさんある。これから丁寧に挑戦したい」と期待を寄せる。 ◇支援金支給や体験ツアー実施 コロナ禍で生まれた地方回帰の流れを後押ししようと、県は移住者へ支援金を支給したり、オンライン移住体験ツアーを実施したりするなど、移住を促す取り組みを強化している。 県の支援金制度は、未就学児のいる子育て世帯対象に、移住時に1世帯10万円、2年後に10万円を追加支給する。事業費2000万円を計上し、今春導入をめどに準備を進めている。 他にも新型コロナの影響でオンライン授業が増えたことなどを受け、県外から県内大学へ転入・再入学したり、県内企業へ就職したりする学生らを対象に、最大50万円を助成する制度も始まっている。 また、1月から始まったオンライン移住体験ツアーは、ビデオ会議システム「Zoom」を使い、移住者や徳島にゆかりがある人が、移住を決めた経緯や徳島暮らしの魅力を紹介する。また、各市町村担当者や県の移住相談員による「徳島県市町村オンライン移住相談会」も実施している。 県とくしま回帰推進課によると、例年は対面式の移住フェアなどでPR活動していたが、新型コロナの影響で中止が相次いだため、オンラインでの活動を本格化させた。同課の担当者は「今後は感染状況を見極めながら、対面とオンラインを組み合わせ定住促進の活動を進めたい」としている。 移住に関する問い合わせは、東京都の移住相談センター(090・7720・7047)か、徳島県の移住交流促進センター(0120・109・407)。