児童虐待、その背後に潜む性的被害 隠れた傷、苦しみ長期に
安心できるはずの家で、養育者やきょうだいから性的虐待を受け、苦しみを抱える子どもたちが大勢いる。全国の児童相談所(児相)が把握した虐待のうち、「性的虐待」はわずか1%程度だが、これは氷山の一角にすぎない。親の暴力などは明かすことができても、性的虐待は最後まで話せない子どもが多く、潜在化しやすいためだ。 実際、児相の現場では身体的虐待やネグレクトなどで一時保護した子どもが、性的虐待も受けていたと後から判明するケースが相次いでいる。深刻さが明らかになり、行政もようやく重い腰を上げた。 (共同通信=川南有希ほか) ▽告白 「人に言えば、お母さんの心の病気がひどくなる」。関東地方の児相で一時保護された女児は、父親から性的虐待を受けていた。しかも、父親は女児にこう言い含め、娘が他言しないようにしていた。子どもがやっとの思いで児相に訴えても、母親が真実を受け入れられずに否定するケースもあり、虐待の中でも「最も介入が難しい事案」(児相職員)だ。
2019年度に全国の児相が相談・通告を受けた児童虐待件数は19万3780件(速報値)。最多は心理的虐待の56・3%、次いで身体的虐待25・4%、育児放棄(ネグレクト)17・2%。一方で性的虐待は1・1%にとどまっている。 ただ、この数字は実態を表していない可能性が高い。統計上、きょうだいや母親の交際相手から性的虐待を受けても、保護者からの「ネグレクト」に分類され、性的虐待に計上されないことも、その一因。米国では性的虐待が全体の約1割を占めるとの調査結果もあり、専門家からは日本の統計で実態を現しているかに疑問の声が上がっている。 ▽0歳児の被害も 被害に遭うのは女児が多い。神奈川県中央児童相談所が18年に公表した性的虐待に関する調査報告によると、09~16年度に確認した性被害約200件のうち、性別は約9割が女子で、中には0歳児も含まれていた。さらに、当時の職員にアンケートできた約120件を分析すると、初めて被害に遭った平均年齢は9歳だった。