なぜスポーツ推薦入学の室屋が在学途中にプロ転向できたのか?
FC東京から正式なオファーが届いたのは昨年12月上旬、手倉森ジャパンがカタール・UAEへと直前合宿に向かう直前だったという。 「この時点で“来年はプロとして挑戦したい”という話を監督としていました。その後、最終予選を戦って、連続出場が懸かったプレッシャーの中で過ごした時間が自分にとってすごい良い経験だったので、プレッシャーをもっと感じながらサッカーがしたいと思うようになって、Jに挑戦したいという気持ちが強くなっていったんです」 合計3クラブから正式なオファーが届いた中でFC東京を選んだのは、昨年4月に特別指定選手としてFC東京の練習に参加した経験だった。 「特別指定で練習に参加して、雰囲気の良さ、練習の質の高さを感じました。その中でベンチ入りもできるかな、という甘い気持ちもあったんですけど、ベンチにも入れないまま、途中で大学に戻ることになって悔しさが残っていたので、絶対にここに戻ってきてポジションを掴みたいという気持ちが強くなりました」 リオ五輪へのエントリーは18人。23人だった最終予選から5人も少なくなる狭き門だが、もちろん、FC東京でも熾烈なポジション争いが待っている。室屋の前には徳永悠平、駒野友一という日本を代表するサイドバックが立ちはだかり、試合に出られるのは簡単なことではない。だが、室屋はきっぱりと言った。 「出られる保証がないところで練習を積んで試合に出られるようになったら、大きく成長できると思います。サッカー選手である以上、ポジションが保証されてないのは当然、ここでポジションを掴むことに意義があると感じています」 背番号は6に決まった。今オフにオランダのフィテッセに移籍した太田宏介、その前には今野泰幸が背負った重みのある番号だ。クラブから提示された際には「僕でいいんですか」と恐縮したというが、今はやりがいを感じているようだ。 「プレッシャーは凄いんですけど、それはあまり考えず。“背番号6と言えば宏介くん”というイメージがあると思うんですけど、この1年で“6番と言えば室屋”と言われるぐらいの活躍ができたらいいと思っています」 チームへは明日9日から合流するという。大学生Jリーガーの先輩である長友と武藤はすぐにレギュラーとなり、1年目のうちに日本代表へと駆け上がった。偉大な先輩の後を追うように、室屋も1年目からのポジション奪取と、リオ五輪出場、メダル獲得を目指す。 (文責・飯尾篤史/スポーツライター)