イマイチな特産品に共通するある問題
自身も地域資源の「6次産業化」に取り組む片桐新之介氏(地方創生コンサルタント)による「なぜ地方創生はうまくいかないのか」の3回目。今回は、片桐氏が失敗の原因として挙げる6つの要素の(3)~(6)と、特産品開発のあるべき姿を論じる。 宮崎県知事として県産品の売り込みに奔走したあの人(写真) ※1回目、2回目を読む。 (片桐新之介:地方創生コンサルタント、第6次産業コンサルタント) 前回の記事で、特産品開発に失敗する理由として、(1)責任主体の力不足(責任感、開発力、営業力)と(2)マーケットリサーチの不足、あるいは勘違いの2つを解説した。今回は、残り4つの要因を述べていこう。 (3)商品力のなさ 前回の(2)の部分でも述べたが、食品業界の企業は多くの資金を投じて日々新しい商品を開発している。その商品に比べて、自治体主体で開発された商品に魅力はあるのか。スーパーやコンビニエンスストアで並んでいる既存の大手企業の商品に比べて何か勝っている点はあるのか。往々にして勝っている点は何もないことが多い。地元産の原材料、地域の人が手間暇をかけて作った、というどこにでもあるようなストーリーばかりである。 たとえば、豆乳一つをとっても、紀文など大手企業が美味しくて、味のバリエーションもあって、様々な容量の商品を流通させている。本来、マーケットリサーチの時点で、こういった大手の商品に対してどのくらい商品力として太刀打ちできるものがつくれるのかという検証をしなければならないのだが、「地元産商品であることをアピールすることで一定の売り上げは成り立つ」という謎理論で、魅力に乏しい商品が開発されることとなる。 写真は京都府宇治市にある平等院鳳凰堂前の茶店でいただいた抹茶ソフトクリーム。抹茶パウダーがこれでもかというほど振りかかっている。少なくともこれくらいの特徴づけは必要であろう。
■ その原材料は本当に競争力があるのか? (4)地方という特性を活かした戦略のなさ、あるいは地域の魅力を過信した誤った戦略づくり (2)と(3)で述べたことの延長にもなるが、その地域にとってどんなことが強みとなるかを検証することが必要である。 塩谷町は戦略立案を全く行わないまま事業を進めているように見受けられる。また、世羅町のワイナリーも、産地形成としてブドウを選ぶまでは良いとして、その付加価値向上のためにワインを選択したことは、果たして得策だったのであろうか。 甲府や長野といった日本ワイン主産地と比することができるくらいのワイン用ブドウの生育に適していた場所だったのだろうか。その割には設立から15年以上たっているのに、ワイン用ブドウ(カベルネソーヴィニョンなど)の生産が進んでいないように見えるのはなぜか。 後発の国内ワイン産地でも、山形県高畠ワイナリーなどはワイン用品種のブドウの栽培と品質向上を成功させている。2003年ごろ、高畠ワイナリーを視察に訪れた時、世界中のワイン用ブドウ品種の試験栽培を行っており、この先どの品種でなら高畠でいいワインが作れるかということに熱心に取り組んでいた。 本来なら、地域の中で、多くの人が知り、一定の評価をしている食材を活用するべきである。そういった発掘のためのワークショップをおこなったうえで商品開発を進める地域もある。ただ、それが他産地と比べてどこまでの魅力があるかを検証することが必要だ。 その地域で仮に乳製品の生産量があるとしたら、北海道などのTOPブランドに比べて戦えるような魅力があるのか。先ほども述べたように、「地元産商品」であることをアピールしても売れるかどうかは全く分からない。