江東区の計画は大失敗 結局、ロープウエーは「都市の輸送手段」になれるのか?
YOKOHAMA AIR CABINの登場
ロープウエーが新たな都市の輸送手段として注目されている。現状は観光地や遊園地のものでしかないが、これを都市の輸送手段として用いる構想は、既にいくつか存在している。ただ、現状で実現している事例はない。果たして、新たな交通手段としてロープウエーが導入される可能性はあるのだろうか。いま日本で都市型ロープウエーとされているのは2021年4月に開業した横浜・みなとみらいの「YOKOHAMA AIR CABIN」だ。 【写真】YOKOHAMA AIR CABINに乗った「かわいすぎる来客」を見る ただ、これは「日本初の都市型ロープウエー」とは歌われているものの、新たな交通手段とは言い難い。ゴンドラひとつあたりの定員は 「8人」 と少なく、運賃も大人片道1000円、往復1800円と高額。あくまで観光地の新たなアトラクションと考えたほうがよい。 公共交通手段としてロープウエーを導入することが検討された事例では、福岡県福岡市で提案されたものがある。これはJR博多駅~博多港ウオーターフロント地区を結ぶ新たな交通手段として検討されたもので、高島宗一郎市長が意欲を示したものの反発も強く2019年に頓挫している。 やはり、ロープウエーは ・観光地のアトラクション程度と考えられている ・諸外国でも導入事例が少なく、検討材料も限られている ことから、なかなかまともに論議されていないようだ。 それでも未来がないわけではない。東京の江東区が区内の交通手段として検討したことがある。これは2014年に東京オリンピック・パラリンピックに向けた整備のなかで浮上したものだ。 江東区では「オリンピック・パラリンピック施設設計に先立つ提案」として、 ・水上バスステーション ・水陸両用バス用スロープ の整備とともに都市型ロープウエーの導入を掲げている。
検討段階から難航した理由
当時の資料を読むと、 「オリンピック・パラリンピック開催に向けた魅力的な観光資源として都市型ロープウエーを導入する。交通手段として比較的高い輸送力を有し、道路交通に負荷をかけずに短期間で整備が可能なため、都心方向へのアクセス強化にも貢献ができる」 とし、有明・豊洲に整備を検討することを示している。ただ、この計画は検討段階から難航している。 なぜなら、整備する理由が ・観光用 ・鉄道・バスに代わる公共交通手段 どちらなのか判然としなかったからだ。2015年6月、山崎孝明区長は定例記者会見でロープウエーの進行状況を尋ねられ、こう回答している。 「最初の計画で、私の考え方と事業者の考え方が違っていまして、私は観光用として考えているのです。ところが事業者側が検討したのは、豊洲から汐留の通勤用の、つまりBRT(バス・ラピッド・トランジット大容量の都市公共輸送システム)の機能を果たすようなシステムを考えていたようです。ですから30~40人乗りの大きなゴンドラで、料金は通勤用として考えると片道300円だと。こういう計算で考えていたようで、これでは資金回収にそれこそ50年もかかってしまう。これでは事業者が集まるはずがありません。私は、観光用ですと、ですから、1500円~2000円の料金で乗ってもらえる。観光用ならば強風が吹いた時には止めてもいいわけです。通勤用ではありませんから。だからそうやってものを考えていけば、私は実現可能であると思っております。まだ5年ありますから、必死に何とか実現したいと思って、これからも挑戦を続けていきたいと思っております」