48歳でプロ野球復帰に挑んだ新庄 その姿にエンターテイナーを感じました!【デーブ大久保 さあ、話しましょう!】
エンターテインメントを見せてもらいました。少し前の話になります。12月7日に神宮球場で12球団合同トライアウトが行われ、そこに新庄剛志も出場しました。4回の打席で1安打を放ち、しかもタイムリーでした。しかし、14日に彼のインスタグラムでオファーがなかったことを報告し、プロ野球への復帰を断念しました。 少しだけですが、彼のプレーを見させてもらいました。まず走塁は、48歳で素晴らしい脚力でしたが、現役よりは少し衰えているかな、と思いました。バッティングのほう、これは想像以上でした。まず「ベテラン打者には変化球は投げるな」というプロ野球での鉄則があります。やはり動体視力など衰えてくるベテランは真っすぐで押していくべきなのです。 このトライアウト、新庄は最初の3打席とも真っすぐをフルスイングしにいきました。これはもう化け物ですよ。引退してから15年が経過し、ほとんど実戦を経験していません。ましてやマウンドにいるのは、つい最近まで現役で投げていた投手です。さらに生き残るかやめるかの瀬戸際で必死に腕を振っている投手です。そのボールに対して初球からフルスイングしていけるだけの筋力と体力と気力があったのです。並の48歳ではありません。 輪をかけて守備は相変わらずの超一流で、見事な肩も見せました。1歩目の速さ、位置取りなども現役そのもの。そしてこれは記者から聞いたのですが、実戦中に1歩目のステップの踏み方をほかの選手に教えていたそうです。 それでもやはり12球団で手を挙げるところはありませんでした。冷たい言い方をすれば「当然」です。いくらスゴイ守備力、強肩を見せたとしても143試合で続けられますか?やはりブランクと年齢の穴は埋められません。そんなことは、新庄自身も、プロを何十年も経験しているので十分に分かっていたとは思います。 私も監督経験があり、プロ編成の経験がありますから、12球団の気持ちもよく分かります。やはり143試合頑張れる選手がありがたいんです。ベテランで休養が必要な選手がいると、スケジュールの面でもいろいろと苦労する部分がありますから。新庄が15年のブランクをものともせず143試合、48歳の男ができるとはやはり思えないのです。 しかし、トライアウトに出ると決めて1年間トレーニングを積んできた。そして最高のパフォーマンスを見せてくれたその男気に“あっぱれ”ですよ。われわれ新庄に近い世代のOBにも、プロとしての在り方を教わった気がします。ゴルフで1日ラウンドして次の日に歩けないとかは、元プロとしては恥ずかしいですよ。 そして何より、新型コロナウイルスの感染が再び拡大し、社会に閉塞感が高まりつつある中、そしてプロ野球のオフの期間に、大きな話題を提供してくれた。そのことに同じプロ野球経験者として感謝しかありません。さすが“エンターテイナー・新庄”と言いたいですね!!
週刊ベースボール