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議論が始まった「コロナ証明書」働くためにあえて感染する人も…

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SmartFLASH

 外出制限が続くアメリカで、経済を優先する動きが出ている。ジョージア州は4月24日、突如として経済活動を再開。スポーツジムや美容室、ネイルサロン、タトゥーショップなども含めて営業再開した。  さすがのトランプ大統領も「早すぎる」と批判しているが、アラスカやオクラホマも似たような動きになっている。ラスベガス市長にいたっては、「砂漠は暑いから」という理由でカジノ再開をもくろみ、大きな批判を浴びている。  ウイルスと共存しながら、どうにか経済を動かせないか。世界中が手探り状態のなかで、注目を集めているのが「抗体検査」だ。新型コロナウイルスに効く薬かワクチンができるまで、すでに感染した人たちに仕事をしてもらおうというアイデアだ。  いったんウイルスに感染すれば、一般的には体内に抗体ができる。一定量の抗体が確認できれば、ウイルスへの免疫ができ、再び感染しにくくなる。抗体は少量の血液で調べられ、症状がない場合でも見つけることができる。さらに、感染して免疫をつけた人が人口の6割以上になれば「集団免疫」となり、ウイルスの流行が下火になる。  欧米では数千名を超える規模の抗体検査が始まった。  スタンフォード大学がおこなった検査では、抗体を持っている人は周辺住民の2.49~4.16%。南カリフォルニア大学の検査では、ロサンゼルスの大人の2.8~5.6%が新型コロナウイルスへの抗体を持っていたという。ニューヨーク州の調査では、感染の最も深刻なエリアで21%、市民の5人に1人が抗体を持っていた。  いずれの調査でも、実際の患者数が報告されているより10倍以上多いことになった。この傾向が確かなら、コロナウイルスによる致死率は、いま言われているものよりずっと下がることになる。  今後、CDC(米疾病対策センター)は1万人規模の検査を実施予定で、ヨーロッパでもさらに大規模なものが予定されている。日本でも抗体検査の早期実施に向けて、厚生労働省が検査キットの性能調査を始めた。  こうした調査は始まったばかりで、キットの精度や、検査対象の偏りなど課題も多い。スペインやインドが購入した検査薬は不良品だったし、韓国では、一度陰性になった患者が再度陽性になった例もある。また、現段階で抗体がどれくらい続くのかもわからない。  だが、抗体を持っている人が再感染しにくいことがはっきりすれば、こうした人たちを優先して働かせることで、経済を回すことが可能になる。そのために考えられたアイデアが、「抗体パスポート」「免疫証明書」などといわれるものだ。  証明書を発行された人は、接客などの仕事もできるし、自由に動けるようになる。まずは医療従事者から始め、やがて社会全体へ広げていこうというのだ。日本でも、陽性反応が出た看護師が勤務を命じられて批判をあびたが、むしろ、こうした動きを加速させようという考えである。  トランプ大統領も、4月17日の記者会見で「抗体検査は、無症状や軽症患者の把握に役立つ。免疫を持った人たちによって、アメリカ人を仕事に戻すサポートができる」と述べている。  ただし、もちろんここに大きな問題がある。ブルームバーグは、4月9日、ハーバード大学の生命倫理の専門家のこんなコメントを報じている。 「抗体があれば仕事できるなら、率先して感染したいと思う労働者もいるでしょう。それはクレイジーに聞こえるかもしれないが、家族に食事を与えられるなら、やむを得ないと感じる人だっている」  外出制限による不自由より、あえてコロナに感染して自由と収入を得たい。抗体検査が一般化すれば、そんな恐ろしい考え方をする人が出てくるかもしれない。(取材・文/白戸京子)

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