「まともな会社で働いた事ない」45歳男性の闘争、深夜残業に一方的な減給、パワハラ、即日解雇
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。 【写真】「正社員」「請負ではない」と明記された求人票 ■「正直、もう働きたくありません」 就職氷河期世代のハルキさん(仮名、45歳)は今まで「まともな働き口」に出合ったことがない。深夜までのサービス残業に一方的な減給、パワハラ、即日解雇──。10社以上の会社で働いたが、手取り20万円に届かない非正規雇用がほとんどだった。採用時の条件が実態とかけ離れた“求人詐欺”に遭ったこともある。いわゆる“ブラック企業”を転々とするなかでメンタルを病んだ。
「正直、もう働きたくありません」 ハルキさんはそう本音をこぼす。そして怒りを抑えるように続けた。「社長や経営者には、専門の資格や免許を取得させるとか、定期的に講習を受けることを義務づけるとかすべきです」。人を雇うからには、まずは労働関連法やハラスメント防止を学べというわけだ。 ハルキさんが渡り歩いてきた悪質企業の中でも、昨年クビになった会社は特にひどかったという。ハローワークで見つけたマンション管理の仕事。求人票の雇用形態に正社員とあったので迷わず応募した。
ところが、働き始めて数カ月が過ぎたとき、社長から作業着を貸してほしいと頼まれたので、自身が着ていた服を手渡したところ、袖口の汚れを指摘された。さらには「なんでそんなに汚いんだ!」「こんなもん人間が着るもんじゃねえ!」と激怒されたのだ。 作業着はたしかに袖口が黒ずんでいたという。ただ3日に一度は自宅で洗濯をし、襟元や袖口には部分汚れ用の洗剤も使っていた。黒ずみは、清掃や設備点検をしていれば普通にできる程度のもので、怒鳴られるような汚れではなかったと、ハルキさんは主張する。
一方的な罵倒にハルキさんが反論すると、今度は「生意気なことを言うなら、明日から来なくていい」と告げられた。即日解雇もショックだったが、その後、ハルキさんの就業形態は請負なので即日解雇には当たらないと開き直られ、二重にショックを受けた。 ■正社員ではなかった 正社員ではなかったのか──。ただ振り返ってみると、思い当たることはあった。採用時、社長から「最初の3カ月は外注という形になる」と言われたのだ。雇用契約書も社会保険もなし。さらに給与支給の前にはなぜか請求書を書かされた。